ビッグモーター事件の新たな視点

 一時期、ビッグモータ―社の事件が連日のように報道され、多くの解説サイトが作られました。ほぼ全容が明らかになり一応の決着をみたようですが、私には未だに釈然しないことがあります。そこで今回、この事件について私がもっとも気になっていることを述べたいと思います。報道とは違う視点で問題を提起しますので、皆さんも考えてみてください。

1.「顧客・市場の理解」のプロセスがどうなっていたのか?
 一般的に売上拡大を狙うときは市場やお客様の動向を分析します。例えば、地域・店舗・性別・年代層などのカテゴリー毎に、購入品目・使用目的・購入額・クレーム数などを調べて分析します。これだけの大きな会社になれば、分析を行う専門の組織があると思います。分析結果を見れば「この店舗はキズの修理がやけに多い」「今月はパンク修理の数が急増した」など《いつもと違う状況》に気づいて原因を調べるはずです。調べれば故意にやったことだと分かったかも知れません。
 原因分析では「ミスした原因」と「ミスを見逃した原因」の両方を考えることが必要です。今回の事件についての報道や解説は、過剰なノルマ、モラハラ・パワハラ文化など「なぜ起きたのか」という説明がほとんどで、「なぜ気がつかなかったのか」の説明がほとんどなかったように思います。問題が発覚したきっかけは内部告発のようですが、その前に正規のマネジメントプロセスでなぜ気がつかなかったのか疑問です。
 気がつかなかった原因として考えられることを挙げてみます。
 ①顧客や市場の動向を調べていない ・・・ 経営戦略の問題
 ②不正の数が少ない(統計学的に”有意”でない)・・・(やむを得ない)
 ③変化に気がつかない(分析する力がない)・・・ 技術の問題
 ④問題に気がつかない(問題意識がない) ・・・ 育成/指導の問題
 ⑤報告しない(面倒)・できない(上司が怖い)・・・ 内部統制の問題
 ⑥報告されたことをもみ消した(黙認) ・・・ コンプライアンスの問題

 報道を見る限り、徹底した「利益至上主義」だったようなので⑤の可能性が高いと思います。本当に利益を追求するなら①はあり得ないでしょう。③④の可能性も考えられます(儲けることしか教えてこなかったのかも)。もし⑥だったら会社はもう終わりです。経営層が変わっただけでは済みません。少なくとも、本部機能の部長クラスまで総取っ換えしない限り会社は変わらないでしょう。なぜなら、長年植え付けられた「利益至上主義」「パワハラ文化」「もみ消し体質」が残るからです。上層部にいる人はそういう環境で偉くなったのですから、それが正しいと信じています。それを否定されることは、それまでの人生を否定されることになるので、頑なに変えないと思うからです。

2.車の所有者に直接の被害はなかったのか?
 報道されているのは損保会社の被害のことばかりですが、車の所有者(自動車保険加入者)に被害はなかったのでしょうか?
 ・自動車保険を使うと等級が変わり保険料が高くなるはずです。
 ・軽微な傷なら保険を使わずに自費で支払うこともあります。
 車の所有者は、保険料が高くなったことに気がつかなかったのでしょうか? また、身に覚えのない傷を不思議に思わなかったのでしょうか? 損保会社の被害の方が大きく社会的影響も圧倒的に大きいため個人の被害は問題にならないのかも知れませんが、私としては個人への影響の方が気になります。

3.除草剤散布は悪いことなのか?
「街路樹の除草剤問題」については、私は一概にビッグモータ―社員を責める気になれません。なぜなら共感できる部分もあるからです。
 私が住む町にも街路樹はたくさんあります。そして、大抵その根元は雑草だらけです。中には雑草が車道にまで伸びている所もあります。ときおり街路樹の枝打ちや草刈りが行われていますが、夏の雑草は直ぐに伸びてしまいます。通り沿いにある企業や店舗にしてみれば、見た目が悪いので何とかしたいと思っているはず。草刈りは大変なので除草剤をまきたくなるのは当然だと思います。「街路樹を枯らした!」と一方的に責める前に、その背景や経緯を知る必要があると思っています。管理する自治体が街路樹や歩道の雑草対策をどうしていたのか気になります。

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