これまで自身の出版物において、品質に関することについてイメージしてもらうために、時々病気に例えて説明してきました。《因果関係》の説明で心臓病、《程度(計測)》の説明で糖尿病などです。病気に例えたのは、私自身これまで幾つかの病気を患って、医学について少し興味があったからなのかも知れません。そこで今回は、私が経験した病気の中で、多くの人が普段あまり耳にしない病気についてお話します。
1.大腿四頭筋拘縮症
ふとももの筋肉が硬くなって正常に働かなくなる病気です。
小さい頃よく高熱を出して、頻繁にふとももへ解熱注射をしたことが原因で発病しました。歩き始めた頃、右足のかかとで左足を蹴飛ばしてよく転んでいたそうです。小学生の頃にこの病気が社会的に話題になり大きな病院で診てもらいましたが、日常生活には支障がなく手術しても完全によくなる保証はないと言われて放置しました。
日常生活にほとんど支障はありませんが、右足を内側に回しにくいので、正座がうまくできなかったり、スキーのボーゲンが上手くできなかったので、子供の頃は少し辛い思いをしました。
2.鼻中隔湾曲症
鼻中隔(左右の鼻の穴を隔てる仕切り)が曲がっているために、空気の流れが悪くなって様々な鼻の症状を引き起こす病気です。
子供のころから鼻が悪く、蓄膿症になりかかっていると言われて治療を繰り返してきました。社会人になって仕事に慣れた頃、思い切って長期休みを取って手術を受けました。手術は、小さな刃物(三角メス?)を鼻の穴から入れて、ガリガリと骨を削るというものです(40年以上前の事なので現在は違うかも知れません)。局部麻酔なので削っている所は痛くないのですが、鼻の穴を大きく広げられるのが辛かったことを覚えています。
現在は、鼻の通りがよくなって快適です。
3.過敏性大腸、大腸憩室
子供の頃から、何かあるとよく腹を下していました。社会人になって「過敏性大腸」と診断されて通院していましたが、時々痛むことがあったのでレントゲン(肛門からバリウムを注入して撮影)を撮ったところ、大腸全体に約10個ほどの大小様々な憩室が見つかりました。憩室とは、腸内の圧力によって腸壁の弱い所が伸びて部分的に膨らんだものです。ちょうど、マンガやイラストでよく見る “焼いて膨らんだ餅” そっくりです。膨らんだ憩室の中には便が溜まっているので、医師から「放っておいて破裂すると命に関わる」と言われました。一度なると完治することは無いそうです。
落ち着いていれば日常生活に支障ありませんが、体調を崩すと炎症を起こします。実際、50代に2回、大腸憩室炎(かなり痛い)を発症しました。入院して1週間の絶食と点滴、さらに数日間様子を見て結局10日間入院しました。
現在も気をつけながら生活しています。少しでも大腸がシクシクしだしたら、お酒と辛い物を控え、消化の良い食事を心掛けるようにしています。
4.網膜剥離
眼球の奥にある網膜が剥がれることで最悪失明する病気です。激しい衝撃で起きる外因性(ボクサーがよくなる)と、病気や加齢で起きる内因性があります。私の場合は、父親もなったことがあるので遺伝的な理由のようです。
20代の末に、時々歪んだ光の塊が見えたり消えたりするようになりました。ガラス瓶の底を通してライトを見た時の感じです。当時、過敏性大腸で総合病院に通院していたので、そのついでに眼科で見てもらいました。診察した医師の最初の一言が「来てよかったね」。その場で直ぐに両眼にレーザー凝固治療(剥がれかかった部分をレーザー光線で焼き固める治療)を施しました。「これで1週間様子を見て、ダメだったら手術します」と言われ、結局右目を手術することになりました。
手術は局部麻酔で行いました。手術中、目は見えないのですが音は聞こえます。執刀医が研修医を指導しているようで、「ほら、ここに穴があるね」「それじゃ??してみようか」と言っているのが聞こえました。手術自体は痛くないのですが、数日後のレーザーでの集中治療が大変でした。単発の照射は一瞬で終わりますが、その日は数百発連続で照射し、我慢できずに途中で痛み止めを打ってもらいました。終わった後は、目の奥がズキズキして半日ほど寝込んでいました。
今でも、年に1回は眼底検査を受けています。瞳孔を開くので車の運転や強い日差しの中を歩くことができず面倒ですが、失明の危険があるので怠れません。目の病気は怖いです。皆さんも見え方に少しでも異常を感じたら直ぐに眼科で見てもらってください。「来てよかったね」と言われるかも知れません。
5.帯状疱疹→ハント症候群
帯状疱疹とは、子供の頃の水痘(みずぼうそう)の菌が体の奥に潜んでいて、それが大人になって発症する病気です。神経に沿って発疹を起こすのが特徴です。痛みの神経がやられると激痛を伴います。
30代の初め、年末に少し風邪気味だったので早めに就寝しました。右耳が少し痒かったのを覚えています。翌朝目が覚めると、右顔面が垂れ下がってひどい顔になっていました。近所の耳鼻科で診てもらったところ、大きな病院へ行くように言われました。そして「帯状疱疹によるハント症候群」と診断され即入院。年末年始を病室で過ごしました。
右耳の中に発疹が出ており、顔面右側の運動神経・味覚神経・めまいの神経がやられ、顔面麻痺・味覚障害(塩味を感じない)、めまいの症状がありました。幸い、痛みの神経ではなかったので痛みはありませんでした。
治療は、①抗生物質注射(帯状疱疹ウィルスの除去)、②星状神経節ブロック注射(麻痺回復)、③運動機能リハビリ の3つです。①は1週間ほどで終了。②③は3年ほど通院しましたが、治療効果が見られなくなったので治療をやめました。今は、顔面の垂れ下がりはなくなり、右目が少し開けづらい程度で日常生活に問題はありません。
帯状疱疹は出所によってはとてもつらい病気です。痛みの神経をやられるとかなり痛いそうです。神経が傷つくと治るまでにかなり時間がかかるので、長い間痛みに苦しむことになります。早く治療を始めれば治りも早いようですので、異常を感じたら迷わず受診しましょう。
帯状疱疹は、普通の人は一度やれば二度とならないと言われていますが、持病がある人は何度でもなります。実際、身内に長年糖尿病の治療を続けている人がいますが、過去に3回帯状疱疹を発症しました。
6.うつ病
40代の中頃に発症しました。それほど深刻な状態ではありませんでしたが、眠れず、元気がなく、やる気が出ない日が続きました。病院に行く気になったのは、些細なことも決断できなくなったことに気づいたからです。出勤するのにYシャツやネクタイを自分で決められず愕然としました(愕然とするだけの気力はまだあった)。その日の内に、妻に付き添ってもらって精神科を受診。中程度のうつ病と診断され、3ヶ月ほど休職して療養しました。その間、昼寝・読書・ゲーム・一人旅など、やりたいことを無理しない範囲でやっていました。仕事に復帰した後も、無理をしないで少しずつ元に戻していきました。薬も、最初はかなり服用していましたが、徐々に減らしていき、約10年かけて治療をやめました。
よく「うつ病は風邪のようなもの」と聞きますが、それは「風邪のように簡単に治る病気」という意味ではなく、「風邪のように誰もがかかる病気」という意味だと思っています。ちょっと無理をすると誰でもなる可能性があります。私の場合、当時、仕事の変化と家族の問題が重なって精神的にかなり疲れていたように思います。皆さんも、精神的に疲れたなと感じたら、直ぐに休むようにしてください。
うつの初期症状として喉に違和感を感じる人がいるようです。実際、私は発症前にかなり強く感じていて、耳鼻科で何度も診てもらいましたが異常はありませんでした。ネットで調べたところ、咽喉頭異常感症という名前がついており、これは精神的なストレスが強くなった時に悪化するようでした。以来私は、のどの違和感が心のバロメーターになっています。
7.睡眠時無呼吸症
眠っている時に舌が気道をふさいで一時的に呼吸が止まる病気です。30秒程度の無呼吸状態を夜中に何度も繰り返して熟睡を妨げます。また、低酸素状態になるので様々な病気の元になります。
40代末、うつの状態がかなり改善してきたときに発覚しました。仕事中に居眠りをすることが多くなり、はじめは抗うつ薬の影響だと思っていましたが、上司から専門医を受診するように言われて受診しました。検査入院して調べた結果、中程度の「睡眠時無呼吸」と診断されました。
以来、CPAPという装置をつけて就寝しています。CPAPは、鼻マスクを通して気管に圧縮空気を送る装置で、圧縮空気を常時送ることで気道を確保して無呼吸状態を防ぎます。ヘッドギアをかぶってマスクを顔に固定するので少々鬱陶しいですが、慣れれば問題ありません。CPAPを使用する場合は、2ヶ月毎に診察を受けて、無呼吸の状態や装置の状態を確認する必要があります。
寝ている間は常時空気を送っているので、口や喉が乾燥します。私の場合、乾燥している時期だけCPAPに専用の加湿器を装着しています。
CPAPを使用しなくても直ぐに問題が起ることはないですが、2泊以上の出張や旅行の際にはCPAPを持っていくようにしています。海外旅行にも持っていきました。
いびきをかく人はこの病気である疑いが高いようです。実は私も、家族から「いびきがひどい」と言われていました。自分のいびきがどの程度なのか本人は分かりませんが、同居する家族からいびきを指摘されたら、この病気を疑って呼吸器内科を受診することをお勧めします。
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