方針と計画と目標の関係、2つの「目標」

今日(2025年7月20日)は、参議院選挙の投票日です。
私が成人して選挙権を得た頃は大人になった気がして選挙にいくのが楽しみでしたが、最近はほとんど選挙に関心を持てなくなりました。(それでも、選挙には可能な限り行っています)
選挙に関心を持てなくなった理由は、候補者や政党の主張や公約に実感が湧かないからです。
選挙演説は、企業の中期経営方針や年度計画のようなものだと思っています。すなわち、進む方向(方針)とそれを実現するためにやること(計画)を示すのが公約ではないでしょうか? 今の選挙演説からはそれらが感じられないのです。
本コラムで政治論を語ることは差し控えますが、ここでは政治や企業活動などを含めた一般論としての “方針と計画” についてお話ししたいと思います。

目次
方針と計画の関係
目標とは 
方針 & 計画と、目標の関係
方針の変更、計画の変更

1.方針と計画の関係

“方針” や “計画” のイメージは人それぞれだと思いますが、私は次のようなイメージを持っています。
方針これから進むべき方向。行動を選択(優先付け)する際の基準。
    方針は、目的(解決すべき課題や目指す結果)を実現するために定められる。
計画今後の行動を予め決めておくこと。
    計画は、方針によって示された方向性(優先順位)に沿って作られる。

つまり、 “計画” は目的を実現するための行動の集まりであり、”方針” は計画を作る際の枠組みです。

2.目標とは

“目標” とは、行動が “成功したか・失敗したか” を決める判断指標だと思っています。例えば、
「○○の達成」という目標であれば、○○に達していれば成功、達していなければ失敗。
「△月△日までに..」という目標なら、△月△日までに出来たら成功、出来なければ失敗。

目標は、成否を判断する指標なので白黒はっきりできるものでなければなりません。グレーは許されないのです。
時々、白黒はっきりさせたくない時(責任を曖昧にしたい時)に “努力目標” という言葉を使う人がいますが、その使い方は間違いです。努力目標とは、自分でコントロールすることが出来る目標(自己啓発などの目標)のことであり、決してグレーな目標ではありません。努力目標に達していなければ「努力が足りなかった」、達していれば「よく努力した」であり、白黒はっきりしています。

目標には《定量目標》と《定性目標》があります。「定量目標は白黒はっきりしているが、定性目標はグレー」と考える人がいるかも知れませんが、定性目標も白黒はっきりしています。定性目標とは「その状態にあるか・ないか」、つまり「Yesか・Noか」なのです。白黒はっきりしていますね。

3.方針 & 計画と、目標の関係

1.の「方針と計画」に対して、”目標” はどう関係しているでしょうか?
考え方は2つあります。
目的 → 達成したい目標 → 方針 → 行動の計画
目的 → 方針 → 行動の計画 → 行動の程度(目標

この2つの考え方はどちらも正しいです。①の目標は「達成目標」であり、②の目標は「行動目標」です。つまり、”目標” には異なる2種類の目標があるのです。方針と計画と目標を考える時には、この2つの目標(達成目標と行動目標)の両方が必要です。つまり次の流れです。
目的 → 達成目標 → 方針 → 計画 → 行動目標 → 行動する

目標について議論する時、達成目標と行動目標が曖昧だと話が噛み合いません。「目標」と聞いた時には、どちらのことなのかよく確認しましょう。

達成目標は、計画を実行した後の達成度を評価する基準になります。
行動目標は、きちんと行動しているか監視する際の基準になります。
方針・計画を実行する際には、この “評価” と “監視” が必要です。達成評価と実行監視です。つまり、PDCAサイクルには複数組(少なくとも2組)のCheckとActが存在するのです。
  過去記事『PDCAの誤解2(時間がかかる?)』参照。

4.方針の変更、計画の変更

世界は常に変化しているので、方針や計画を決めてもその通りにいくとは限りません。環境が変化した時には、方針や計画を適切に見直す必要があります。

方針を変更するケースは2つあります。
環境が変化して、解決すべき課題が変化した場合
② 計画通りに進まないため、方針を転換する場合

また、計画の変更が必要になるケースは次の2つがあります。
③ 上記の①②よって、方針が変わった場合
④ 計画通りに進まないため、軌道修正して再挑戦する場合

これらのうち、①②③は再計画(作り直し)、④は計画変更 です。
再計画では、環境がどう変化したかを見極めて、その変化に対応するにはどうしたらよいかをよく考えることが必要です。
計画の変更では、なぜ計画通りにいかなかったのか原因を突き止めることが重要です。

いずれにしても、方針や計画通りにいかなかった時に、短絡的に「変えればいい」と考えるのではなく、よく考えることが必要です。よく考えずに場当たり的に方針や計画を変えていると、達成目標や行動目標が蔑ろにされてしまい、説得力がなくなります

特に方針の変更は注意が必要です。方針を変えることは、行動を選択(優先付け)する基準を変えることです。何かの優先度を上げれば、必ず他の何かの優先度が下がります。企業の中期計画や政治家の発言を聞いていると、よく「○○を重視する」とか「○○最優先」という方針が聞かれますが、それによって優先度が下がるものについてはほとんど言及されません。「やる」という言葉はポジティブに感じられて格好良く聞こえますが、「新たに “やる”」という行動の裏には必ず「今後は “やらない”」という行動があるはずです。それが【優先付け】です。カッコイイことばかりでなく、「やる」ことによって「やめる・縮小する」ものも明確にして欲しいと私は思います。カッコイイことばかり言われても、絵空事のように聞こえて現実味が感じられません。それも、私が選挙に興味を失った一因です。

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