根本原因分析(RCA)の要点

先日受講した、一般財団法人 日本要員認証協会(JRCA)講演会報告の第二弾です。
テーマは、

 『根本原因分析(RCA)の要点』
  JSQC規格 62-001:2024「根本原因分析(RCA)の指針」
   講演者 プロセスマネジメントテクノ 永原賢造氏

講演の内容は、これまで本ブログでも何度も取り上げてきた「原因分析」や「なぜなぜ分析」のことです。
『JSQC規格 62-001:2024(根本原因分析の指針)』は日本品質管理学会(JSQC)が制定した日本国内規格で、根本原因分析(RCA)の考え方や手法を体系的にまとめたものです。
今回の講演では、これまで私が培ってきた根本原因分析に関する知識を体系的に再確認して再構築するのにとても役立ちました。以下、私の理解を私の言葉・表現で解説します。


根本原因分析(Root Cause Analysis)とは?

事故・トラブル・不正が起きた時、表面的な対応だけでなく、奥深くに深く広がっている原因を見つけて取り除くこと。これによって、類似の原因によって別のところで同一・同様の問題が起きることを防ぐ(未然防止)。

事故・トラブル・不正と、
・それを起こした不適切な行動との関係
・人の行動に直接影響を与える条件(意識、資料、情報、設備、環境など)との関係
・その背後にあるマネジメントの状態との関係
などを分析する。


RCAの基本

1.事故・トラブル・不正の原因

組織には必ずそれまで培ってきた知的資産があり、それらに基づいて業務を遂行します。
知的資産とは、組織に蓄積された知識全般のことです。例えば、標準、フォーマット、記録、経験、ノウハウ、スキル、価値観などです。
事故・トラブル・不正は、知的資産から逸脱した時(不適切な行動をした時)や、知的資産が乏しい時に起きます
知的資産からの逸脱には、悪意のないもの(失敗)と、悪意のあるもの(犯罪)があります。
悪意のない逸脱(すなわち失敗)には、次のようなものがあります。
能力の過信(限界の軽視) ②知識・スキルの不足 ③標準や計画の不遵守 ④うっかりミス

2.不適切な行動の要因

人が不適切な行動をとる要因には、局所要因と組織要因(マネジメント要因)の2つがあります。
 局所要因:人の行動に直接影響を与える条件(意識、資料、情報、設備、環境など)
 組織要因:局所要因を適切な状態に保つためのマネジメントの状態

不適切な組織要因が局所要因を生み、局所要因の悪化が「事故・トラブル・不正」を生みます。
根本原因分析では、目先の局所要因だけでなく、その背後にある組織要因も分析する必要があります。さらには、組織要因の根源にある組織文化(組織内で共有されている価値観や行動原則)にも心を配る必要があります。


【RCAの手順で推奨すること】

1.事故・トラブル・不正及びインシデントの事例を集める
・とにかく事例を集める。経営層のリーダーシップと、人々の積極的参加が重要。
・標準を明確にして、逸脱が直ぐわかるように日常管理を徹底する(管理図、グラフ)。
担当者の不安や不満を積極的に報告してもらう。

2.分析する事故・トラブル・不正及びインシデントを選定する
・特に〈重大なこと〉と〈繰り返していること〉。
・顧客や社会に与える影響や、安全性や生産性に与える影響などから評価基準を定める。
・過去の事例から “共通の型” を探して、リスクに応じて対策する。

3.人の行動と物理的な事象を整理する
・2で選定した分析対象について、〈人の行動〉と〈物的な事象〉を分解して区別する。
・それらの〈人の行動〉と〈物的な事象〉の流れを図にする

4.着目すべき “人の行動” とそのタイプを特定する
・3で、〈人の行動〉が “適切な行動” か “不適切な行動” かを切り分ける
・ “不適切な行動” の場合、どうするのが “適切” だったか明らかにする

5.人の行動を引き起こした局所要因を分析する
・4で、行動の分類(上記「事故・トラブル・不正の原因」の①②③④)を明らかにする。
・それらを引き起こした局所要因を明らかにする

6.局所要因を適切な状態に保てなかった組織要因を分析する
・5で、これらの局所要因を適切に保てなかった組織要因を考える。上記の「不適切な行動をもたらす要因の構造」は一例。
・各階層(経営層、管理層、現場)における問題点を考える。
・考えられる複数の可能性を挙げ、行動を説明できて且つ影響の大きいものを取り上げる。

7.局所要因及び組織要因を改善するための対策を検討する
・取り上げた〈人の行動〉〈局所要因〉〈組織要因〉を整理して、対策を計画する。
・抽象的ではなく、できるだけ具体的なものにする。
・人に焦点をあてるのではなく、手順・環境・マネジメントなどの広い視野で。

8.対策を実施し,効果を確認する
・7で設定した対策を実施する。
・それでも未然に防げなかった事故・トラブル・不正又はインシデントについて、さらに情報を収集する。



8の効果確認は、期待していたレベルと大きく違っていて少々不満があります。(記事『是正処置(効果の確認)』参照)
また、その後の【組織的な運営・推進に関する推奨事項】や『実践事例』については、新たな気づきが少なかったので説明を割愛します。

私は、本ブログの過去記事『失敗の原因(状況、心理、行動)』において「原因分析では【状況】【心理】【行動】の3つを考える」ことを勧めてきましたが、この “状況” が本講演でいう “局所要因” のことだと認識しました。
また、記事『事故対応・トラブル対応のセオリー』において、「原因調査では〈起こした原因]〉〈見逃した原因〉〈管理上の問題〉を考える」ことを勧めてきましたが、この “管理上の問題” が本講演でいう “組織要因” に通ずると感じました。

要するに、事故・トラブル・不正が起きた時には、目先の事象や当事者ばかりを問題にするのではなく、関連する条件(環境、設備、階層・役割など)にも目を向けることが重要だということです。

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