事故・トラブル・不良品など、何か問題を起こしてしまったたとき、その後の対応にはいくつかのセオリーがあります。
【セオリー1】〈応急処置〉〈根本処置〉〈再発防止〉を考える。
◆応急処置:安全の確保や業務・使用継続を最優先にした暫定的な処置
病気に例えると、解熱剤や鎮痛剤などの “症状の緩和” です。
◆根本処置:問題を解決する根本的な処置(修理、交換、復旧など)
病気に例えると、抗生剤、手術などの “治療” です。
◆再発防止:同じ問題が再び起きないようにする処置(原因調査が前提)
病気に例えると、ワクチン、手洗いなどの “予防” です。
【セオリー2】原因調査では〈起こした原因]〉〈見逃した原因〉〈管理上の問題〉を考える。
◆起こした原因:不具合を作り込んだ原因 … 設計や製造の問題
◆見逃した原因:不具合を見逃した原因 … レビューや検査の問題
◆管理上の問題:作業を許可した理由 … 工程移行判定や出荷判定の問題
【セオリー3】原因調査で〈状況〉〈心理〉〈行動〉を明らかにして、再発防止策を考える。
「どういう状況において、どう考えて、どう行動したのか」を明らかにして、
「そういう状況になった理由、そう考えた理由、そう行動した理由」を調査し、
「どんな状況においても、どのように考えても、正しく行動する」方法を考えます。
【セオリー4】原因調査では「なぜ、なぜ…」を繰り返して原因を深掘りする。
ある原因で生じた結果は、そのさらに先で生じる結果の原因と考えることができます。逆に原因は、もっと前に起きたことの結果と言えます。つまり、原因と結果はチェーンのようにつながっており、それを遡っていくことで真の原因にたどり着きます。
【セオリー5】類似の問題がないか確認(点検)する。
ある原因から生じる問題はひとつとは限らないので、同じ原因で別の問題が発生していないか確認します。この時の “原因” とは、セオリー4で明らかにしたチェーンの各階層の原因のことです。
また、発生した問題が新たな問題を引き起こしているかも知れません。顕在化していない(まだ問題になっていない)ものも含めて、危険がないか確認します。
【セオリー6】報告は〈被害者向け〉〈社会向け〉〈関係者向け〉を考える。
◆被害者向け:謝罪が最重要。経緯の詳しい説明も重要。
◆社会向け :経緯・点検結果・再発防止策を説明し、不安を払拭する。
◆関係者向け:経緯を説明し、点検・再発防止策への協力を要請する。これには、自組織内(社員など)への対応も含みます。
【セオリー7】謝罪文のパターン
①謝罪 :謝罪の気持ちを示す
②経緯説明 :問題が発覚した経緯を説明する
③原因説明 :問題が起きた原因を説明する
④点検報告 :他に問題がないことを説明する
⑤防止策説明:問題を繰り返さないための策を説明する
⑥補償 :問題によって生じた損害の補償について説明する
問題を起こしてしまったときには、これらのセオリーを頭に入れて、どう行動すべきか考えましょう。
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◆◆適応例◆◆
これらのセオリーに沿って、7月5日に高知市で起きた児童プール事故について考えてみたいと思います。この事故は、小学生が水泳の授業中に溺れて死亡するという、とても痛ましくショッキングな事件でした。原因など詳しいことは第三者委員会を設置して調査するとのことですが、現時点で報道されている情報から私は次の4つのことが気になっています。
【事故前の対応】
1.環境が変わったのに、なぜ安全対策を見直さなかったのか?
・授業を行うプールを小学生用から中学生用に変更
【事故当時の対応】
2.なぜ、泳ぎが不得手な生徒を、溺れる危険がある深いプールに、浮き輪なしで入れたのか?
・現場の判断で中止することはできなかったのか?
3.なぜ溺れていることに気がつかなかったのか? 気がついていれば助けられたのか?
・監視の訓練は行っていたか?
- 複数人で全体を見る際の分担や見方
- 溺れている人の見分け方(遊んでいる人と溺れている人の区別)
・救助の訓練は? 心肺蘇生の訓練は?
【事故後の対応】
4.なぜ、被害者家族への説明の前に、保護者会を開こうとした(後に撤回して謝罪)のか?
・保護者会の位置づけをどう捉えていたのか?
今後行われるであろう調査報告や、高知市教育委員会の対応、さらには文部科学省や他の自治体の対応に注目したいと思います。すでに文部科学省が「安全管理を徹底するように」との通達を出しており各自治体でも対応が始まっているようです。これは上記1.の観点ですが、それ以外にも上記2.の「現場の判断」や上記3.の「訓練」についても検討が必要だと思っています。
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