仕事においても私生活においても、「よく分からないが何かがおかしい」と感じることがあります。現実には何も起きていなくても、トラブルの兆候がなくても、ただ何となく「なんか変だ.. 」と感じることがあります。今回は、このように「なんか変だ.. 何かがおかしい.. 」と感じた時に、私が心がけていることをお話します。
慎重に行動する
例えば、買い物に行くために車を運転しているとき「周囲の車の流れがいつもと違う」と感じることがよくあります。混雑状態、速度、車間、車線変更のタイミングなどなど、はっきりとは言えませんが、なんとなく「なんか変だ」と感じるのです。天気のせい? 近くで何かの行事がある? もしかすると自分の体調? と考えてしまいます。そんな時は、努めて慎重に運転します。速度を控えめにして、車間をあけて、いつも以上に周囲に気を配ります。
仕事においても「なんか変だ..」と感じたときは注意深く行動します。
データを見た時や報告を受けた時など、はっきりとは分からないが何となく「変だ..」と感じることがあります。そういう時は、他のデータも確認したり、追加の詳しい報告を求めたり、監視を強化したりします。まだ現象が起きていなくても、その兆候を素早く察知する態勢を整えるのです。これは「未然防止」のための行動の一部です。記事『修正、再発防止、点検、予防、未然防止』参照。
自分の勘を信じる & 勘を見える化(数値化)する努力
“勘” とは「あてずっぽう」のことではありません。エンジニアの勘、職人の勘です。長年の積み重ねによって身体に染み込んだ、研ぎ澄まされた感覚(数値化できない小さな兆候や違和感を察知する能力)です。
世の中には、並外れた職人技を持っている人がいます。技術が進歩しても職人技には及ばない領域がたくさんあります。例えば、料理ロボットが今急速に進歩していますが、まだまだ一流料理人の域には達していないでしょう。そこには、火の入れ具合や味付けなど様々な要素が絡んでいて、職人(一流料理人)でなければ真似できないのです。
AIが進歩しているので可能だと思われるかも知れませんが、知識だけではどうにもならないことがあります。例えば、状態を細かく感知するセンサーの感度や、人の動きを再現する駆動装置の問題です。人間並みに鋭い五感センサーと、人間の腕や指の動きを忠実に再現できる装置がなければ一流料理人が創る味は出せません。(将来そのようなセンサーや駆動装置が作られれば、一流料理人の味を作れる料理ロボットが出来るかも知れません)
今の私はそこまで優れた “エンジニアの勘” を持っているわけではありませんが、「なんか変だ」と感じる自分は信じることにしています。そう感じても、今はまだ “慎重に行動する” ことしかできませんが、いずれは違和感をデータ化してマニュアル化することを目指しています。それが今の夢です。
一流のエンジニアを目指している皆さんも、「何か変だ」と感じた時、自分の勘を信じ、さらにその勘を見える化するための努力を続けてください。
「何か変だ..」を見える化する一つの手法
まだ起きていないが起きる兆候を検知する手法に【管理図】があります。
管理図は、同一対象を大量に扱う分野において、品質特性(寸法や重さなど)の値やバラツキの推移を視ることで、品質の安定度を監視する手法です。安定度を見ることで「何か変だ」を察知することができます。
管理図では、幾つかの視点でデータを捉えて異常を感知します。代表的な項目を挙げます。
①値の許容限界(上限、下限)を超えている
②連続して増加または減少している
③連続して同じ領域にある
いずれも、滅多に怒らない異常な状態です。




管理図については多くの解説サイトがありますので、詳しくはそちらで勉強してください。
「何か変だ..」を見える化する手法は管理図以外にもあると思いますが、見える化にとって重要なのは《状態の定義》です。何か変だ.. であれば《どういう状態を異常とするか》です。つまり、「何か得体の知れないものが変だ」ではなく、「こうであるときは異常である」と決めることが重要です。(管理図であれば上記の①②③など)
これは、未然防止の「想定外の事態」を想定することと同じことです。
自分に問題がないか省みる
ここまでは “周囲の異常” を察知することでしたが、次は “自分自身の問題” について取り上げます。
皆さんは、「こちらが言っていることを周りが分かってくれない」とボヤくことがありませんか? 指示したことが伝わらない.. いくら説明しても分かってくれない.. など、よくありますよね。そういう時、理解しない相手が悪いと思っていませんか? 実はそれは、こちらの説明に問題があるかも知れません。
何か問題が起きた時、「自分は正しい。悪いのは向こう」と思ってしまいがちです。そういう時は、見方を変えて「なんか変だ.. もしかして自分のせい?」と自分を疑ってみることも必要です。特に、何度言っても分からない場合や、多くの人が理解してくれない場合は、伝える側の問題によって誤解されていることがよくあります。 記事『苦情、クレーム、サイレントクレーマー』の間違ったクレームも同様。
ですので、いくら説明しても分かってくれない時には、何を誤解しているのか・なぜ誤解しているのかを理解して、的確に説明することを心がけましょう。
ただし、いくら分かりやすく説明しても伝わらない人がいます。人間には、論理的に考えて動く人と、感情や感性で動く人がいます。感性で動く人は、論点や筋道をいくら整理して話しても理解出来ません。私の身近にもそういう人がいます。その人は、こちらが論理的に話せば話すほどイライラしてきて、最後には「理屈ばかり並べやがって!」と怒り出します。そういう時は、説明をあきらめて扱い方を工夫する(力で抑え込む、感情に訴えてお願いする、距離を取る など)しかありません。
すべての人に分かってもらうことはとても難しいことであり、正論だけでは通じない人がいることは憶えておいてください。
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以上、「なんか変だ..」と感じた時の心がけでした。
そう感じたら、まずは慎重に行動し、自分の勘を信じると共に勘を見える化する努力を怠らず、時は自分自身を疑うことを心がけましょう。
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