何かをやろうとしてスケジュールを立てても、必ずしもその通りに進むとは限りません。想定が違っていたり環境が変化するからです。しかし、そのような不確定な状況においても、状況の変化に応じて適切に行動して予定通りに作業を進められる人と、予定通りに作業を進められないない人(スケジュール管理ができない人)がいます。今回は、スケジュール管理ができない人に焦点を当てて、「なぜできないのか・どうすればいいのか」を考えてみます。
スケジュール通りに作業が進まない理由は、大きく2つあります。
・そもそも無理なスケジュール … スケジュールの問題
・想定通りに作業を進められない … 作業遂行能力の問題
この2つの問題を素早く察知して対処すれば予定通りに作業が進められます。逆に、これらを察知できずに放置していると予定通りに作業が進みません。つまり、スケジュール管理ができない人とは、”問題を察知できない人” と言えます。問題を察知できれば、上司に相談するとか自分で工夫するとか何かしらのアクションを起こすことができますが、スケジュール管理ができない人はアクションを起こすきっかけにすらたどり着けないのです。
もう少し具体的に述べます。私はこれまで多くの “スケジュール管理ができない人” を見てきましたが、彼らには共通して2つの特徴(傾向)があることに気がつきました。
◆スケジュール管理ができない人は、普段、ほとんどスケジュール表を見ない
スケジュール表に予定を入力しただけでできた気になっている、あるいはスケジュール表を渡された時にチラッと見て「できる」と思った瞬間に「できた」と思い込んでしまっているように思います。一方、スケジュール管理ができる人は、毎日(あるいは毎週)、終わった事をスケジュール表に記録し、翌日(あるいは翌週)やるべき事を確認しています。スケジュール管理ができない人はそれをやっていないのです。
◆スケジュール管理ができない人は、未来を想像できない
予定通りに作業が進まなかったらどうなるか(自分がどんなに苦しむか、他の人にどんな迷惑をかけるか)が想像できない人が多いように思います。そして、その時がきて「どうしよう..困った..」とアタフタしています。そんなこと、ちょっと考えれば初めから分かることなのに..
それでは、どうしたらよいでしょうか? そのヒントを3つ挙げます。
【対策1】細めに報告させる
社会人として当り前のことですが、それをきっちりやらせるのです。その際、次の2つがポイントです。
(1) より細かい作業に分解して、より短いサイクルで報告させる。
スケジュール管理ができない人ほど、作業の単位を細かく分けて管理することが大切です。このとき、実績を入力したスケジュール表をもとに報告させることが重要です。
(2) 作業が終わった証拠を確認する。
例えば、書類、図面、記録表、部品や製品などです。「終わりました」という言葉だけで信じてはいけません。現物を確認するのです。出来栄えまですべて確認する必要はありません。出来栄えの確認はサンプルで構いません。
【対策2】失敗を記憶に刷り込ませる
失敗したこと(作業が遅れたこと)によってどんな影響があったかを体に覚え込ませるのです。例えば、始末書やレポートなどです。大きな会社であれば失敗事例報告会などで発表させるのもいいでしょう。とにかく、遅れたことを「遅れた」という単なる出来事で終わらせるのではなく、将来につながる資産とする必要があります(記憶もその一つ)。ただし、罰を与えるのではありません。ましてや上司の怒りに任せたパワハラ行動は厳禁です。あくまでも、スケジュール管理能力が低い人を “育てる” のです。
【対策3】スケジュールを、線ではなく面で考える
これは、部下を育てることだけでなく、自分自身のスケジュール管理能力を鍛えることにも効果的です。
スケジュールというと、とかく「時間という一本の数直線上に作業を割り付けたもの」と思いがちですが、そうではなく、多くの作業や他の作業者の予定も含めた “面” で考えることをお勧めします。「この作業は他のどの作業と関係しているのか。この作業が遅れると他のどの作業に影響するのか・誰に迷惑が及ぶのか」を認識させるのです。そのために、私はスケジュール管理を行う際にはガントチャートをお勧めします。
ガントチャートとは、縦軸に作業(タスク)、横軸が時間軸を表した図表で、作業の予定や実績を一目で確認できるようにしたものです。
一般的にガントチャートを《表》として説明しているサイトが多いですが、私は《図》だと思っています。ガントチャートの最大の特徴(メリット)は、作業の依存関係を図示することであり、そのためには表(数字の羅列)ではなく、依存関係を図示(例えば線で結ぶなど)する必要があるからです。この【依存関係の図示】が、”作業が進まなかったらどうなるか(自分がどんなに苦しむか、他の人にどんな迷惑をかけるか)” を想像させることに役立ちます。
また、作業の進み具合を視覚的に表せることも大きなメリットです。数値の羅列だけでは遅れをイメージしにくいですが、実績を塗りつぶすことによって、どれくらい遅れているのかすぐにイメージできます。
以下に、ガントチャートの例を載せておきます。これは、著書「ソフトウェアの品質管理 専門家が教えない大切なこと」の挿入図の一部で、作業の階層(WBS)とガントチャートを併せて表現しています。図の左側がWBS(実際にはこれに作業工数の欄が加わる)で、右側がガントチャートです。長い横棒が個々の作業で、先端が開始時刻、終端が終了時刻を示しています。上下の横棒の終端と先端を結ぶ縦線が作業の依存関係を示しています。また、この図にはありませんが、予定をグレーの横棒で表し、実績(終わった範囲)を黒く塗りつぶします。
ガントチャートは、仕事だけでなく日常生活でも使えます。例えば、「ゲーム、宿題、食事、就寝」をガントチャートで表すと、ゲームの時間が延びれば宿題や食事の時間が短くなる(または就寝時刻が遅くなる)ことが一目稜線ですね。ガントチャートを頭の中でイメージするだけでもスケジュール管理の訓練になります。スケジュール管理が苦手な人は試してみてください。
コメント