データを収集して集計する際には表を用いますが、データが意味することをとらえる(例えば、傾向を調べて原因や対策を練る)ためには、データをグラフにすると分かりやすくなります。数値の大小を “数字” でとらえるよりも、棒の長さや傾きなどから直感的にイメージできるからです。
Excelやスプレッドシートでは様々なグラフが用意されていますが、どのグラフを用いるかは分析する人の能力や経験によります。
また、データの推移をグラフ化する際には、どのくらい毎にプロットするかも重要です。値の変化を見る際、時間軸の取り方によって分析結果や分かりやすさが大きく変わるからです。
今回は、時間軸を「年、半期、四半期、月毎」に変えることによって、見え方がどう変わるかを示します。実際に売上データを分析した事例です。
元データは下の表です。2021年~2024年の毎月の売上高を集計しています。

以降、このデータを元に、幾つかのグラフを示します。
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まず気になるのは、毎年の売上高の推移ですね。
それを示したものが【グラフ1】です。毎年、順調に伸びています。

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次に、表を見ると時期によって売上高にかなりの差があるようなので、グラフ化する時間軸を少し細かくしてみます。まず最初に、上半期(1~6月)と下半期(7~12月)に分けてみます。
それが【グラフ2-1】と【グラフ2-2】です。


【2-1】:時間軸は【1】と変わらず “年” ですが、上半期と下半期の内訳を表示しています。
【2-2】:時間軸を “半年” にしています。
あきらかに下半期の方が大きくなっています。下半期偏重のビジネスです。
※ 【2-1】と【2-2】のグラフは同じデータですが、グラフの種類で変えられます。
【2-1】は積み上げ型、【2-2】は集合型です。【3-n】【4-n】も同じです。
推移を示すデータだけでなく、クロス分析データであれば同じように積み上げグラフと集合グラフを切り替えられます。
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さらに、四半期毎(3ヶ月毎)に分けてみます。それが【グラフ3-1】と【グラフ3-2】です。


【3-1】:時間軸は【1】と変わらず “年” で、3ヶ月毎の内訳を表示しています。
【3-2】:時間軸を “3ヶ月” にしています。
毎年、1~3月に少なく、7~9月に多くなっていることが分かります。特に、2023年の7~9月は突出しています。また、例年10~12月は低下しますが、2024年は低下していません。
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さらに細かくして時間軸を “月” にしてみます。それが【グラフ4-1】と【グラフ4-2】です。


【4-1】:時間軸は【1】と変わらず “年” で、月毎の内訳を表示しています。
ここまで細分化すると、積み上げグラフでは月毎の違いがよく分かりません。
【4-2】:時間軸を “月” にしています。毎月の売上高の推移が分かります。
2023年は、8~10月にかけて好調だったことが分かります。逆に、2024年の8,9月は低調でした。
他にも、月によってはパターンに当てはまらない好調・不調の差があるようです。
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年による好調・不調の違いを見るため、年毎の推移の形を比べてみましょう。それが【グラフ5-1】と【グラフ5-2】です。


【5-1】:時間軸は【4-2】と同じ “月” です。【4-2】が〈年→月〉で細分化していたのに対して、【5-1】は〈月→年〉で示しています。
【5-2】:【5-1】の各年の推移の形状が分かりやすいように、折れ線グラフにしたものです。
2022年9月が著しく低下しています。8月が好調だったのでその反動かも知れません。
また、2024年8,9月も低調ですが、その前後(7月、10,11月)の影響による可能性があります。
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【5-2】で述べた前後の月の影響を考慮して3ヶ月毎のデータに丸めたものが、【グラフ6-1】と【グラフ6-2】です。


【6-1】:時間軸は “3ヶ月” です。【5-1】よりも推移の傾向が分かりやすくなりました。
【6-2】:【6-1】を折れ線グラフにしたものです。
いずれの年も、「真冬が最も低調で夏から秋にかけてピーク」という傾向は同じで、その形を維持しながら年々増加していることが分かります。
2024年は好調に推移していますが、今後どうなるか2026年の値を注視していく必要があります。
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以上、サンプルデータをもとに、グラフを幾つか示しました。同じデータでもグラフによって見え方がかなり違うことを実感していただけたと思います。
値の推移をグラフで示す場合には、以下の点を考慮して、いろいろ試してみると良いでしょう。
①グラフの種類
②時間軸の大きさ(長さ)
③推移の傾向の違い(例えば、毎年の推移の傾向)
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記事『データ分析事例1(ピーク、複合分析)』も、併せてご覧ください。
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