CMやチラシは、連日「このお値段はお買い得です」「この機能は嬉しいですね」と連呼しています。それらは決まって、商品のメリットを強調するものです。メリットさえ伝えれば買ってくれると思っているのでしょうか? 少しひねくれている私は、そういう言葉を聞くと少々うさん臭く感じてしまいます。
「本当に効果があるの?」 … 印象操作に引っ掛からないぞ!
「そのデメリットは?」 … 値段や機能の代わりに何を犠牲にしているの?
※記事『便利は不便、便利は危険』から引用。関連している内容なので、ぜひこちらもご覧ください。
良いこと(メリット)の裏には必ず悪いこと(デメリット)があります。よく、”目先の利益(メリット)に目が眩んで失敗した” という話を聞きますが、それでは困りますね。常に冷静な判断が必要です。
ビジネスにおいては、意思決定の際に「メリット・デメリット表」や「意思決定マトリクス」を用いることがあります。どちらも、選択肢がもたらす影響の違いを並べて比較するものであり本質的には同じです。強いて言えば、手軽に使うなら「メリット・デメリット表」、より厳密に評価したいなら「意思決定マトリクス」を用いるとよいでしょう。
プライベートにおいてもメリットをデメリットを考えることは大切です。誰でも無意識に考えていることだと思います。しかし、その違いを明確に把握しきれていないために、”目先の利益に目が眩む” のです。ですので、仕事以外においても、「メリット・デメリット表」や「意思決定マトリクス」を使った方が良いでしょう。「いちいち作っていられるか!」と言う方もいるでしょうが、実際に作らなくても頭の中で考えるだけでも良いのです。日頃から、メリットとデメリットを対比して考える癖を身に付けましょう。
メリットとデメリットを対比して考える際は、次の3つを意識することをお勧めします。
(1) 比較項目はそれだけか?
「便利そう」とか「おいしそう」など目に付きやすい項目だけではダメです。自分の身の回りに影響しそうなことを洗い出すことが重要です。例えば、価格、栄養価、見た目、お手入れ、修理、捨て方、収納、家族の意見、見栄(他人の目)などなど、様々なことがあるはずです。
(2) 将来はどうか?
今はメリットでも、時間が経てばデメリットに変わるかもしれません。「そのメリットはいつまで続くか?」「時間経過と共に生じるデメリットはないか?」など、時間軸にも気を配りましょう。
『今が幸せならそれでいい』という人は好きにしてください。『未来も安定して過ごしたい』と願うなら、未来にどうなっているかにも心を馳せましょう。
(3) 「した時」どうなるか? 「しなかった時」どうなるか?
例えば買うか買わないか悩んだ時は、「買うとどうなるか」と「買わないとどうなるか」を両方考えましょう。”行動した時” と “行動しなかった時” の両方を考えるのです。
多くの人は、まず最初は “行動した時のメリット” に意識がいきます。それを第一段階として “行動した時のデメリット” にも意識を向けるようにします。さらに第二段階として “行動しなかった時のメリットとデメリット” についても等しく意識を向けるのです。
《買った時のメリット》 ,《買った時のデメリット》
《買わなかった時のメリット》,《買わなかった時のデメリット》
の4象限で考えるのです。
一般的には、
《行動した時のメリット》と《行動しなかった時のデメリット》は同じであり、
《行動しなかった時のメリット》と《行動した時のデメリット》は同じです。
ですので、普段は《行動した時》のことしか考えません。ですが、敢えて《行動しなかった時》のことを考えてみると、それまで気が付かなかったことが見えることがあります。特に、図や表にして自分の言葉にしてみるとよいでしょう。言葉の使い方が微妙に変わり、ニュアンスが変わってきて気づきが生まれます。
その実例を示します。
2025/12/2から紙の保険証が使えなくなりました。マイナンバーカードやマイナ保険証の是非については多くの議論がなされていますが、政府の説明も報道機関の解説も何だかピンときません。そこで、私がどう考えているのか書き出してみました。マイナ保険証のメリットとデメリットです。
政府(厚生労働省)は、以下のメリットがあると説明しています。
・医療の情報共有(医師、薬剤師、救急現場)
・高額医療費請求の簡略化(限度額適用申請不要)
・確定申告の簡略化(医療費の自動入力)
・カード統合による利便性

しかし私はこれらに全く魅力を感じていません。いつも同じ病院と薬局を使っていて、高額医療費請求をしたのは65年間生きてきて1回だけ。正職に就いていないので医療費控除を受けるだけの税金も納めていない。だから、厚生労働省が掲げるマイナ保険証の恩恵とは無縁なのです。
そもそも、情報共有は本人の同意が前提のはずだが、救急時にはそんなことはやっていられないはず。
それでも私はマイナ保険証にしました。そしてたくさんのデメリットを感じています。
とにかく面倒。申請も更新も、病院や薬局での提示(読み取り)も、紙の保険証に比べてかなり面倒。
それでもマイナ保険証にしたのは、将来の医療制度が変わる際に不都合を生じさせないためです。今後、日本の医療制度はマイナ保険証が前提で見直されていくと思うからです。利用や手間よりも、将来の恩恵や見栄を重視した結果です。

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一方、90歳の母はマイナ保険証ではなく資格確認書を使っています。理由は、役場に出向くのが困難なのと、今さら情報を共有しなければならないほど高度な医療行為が必要ない..など、メリットが少ないからです。資格確認書の運用で全く問題はありません。将来の恩恵よりも現在の恩恵(手間)を重視した結果です。

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ここからは私の持論です。政治的発言を含みますで、気に障る方は読み飛ばしてください。
厚生労働省の説明は、取って付けたようなメリットだらけの、まるで低レベルのCMやチラシのようです。「商品のメリットを並べておけば買ってくれる = 国民のメリットを並べておけば賛同してくれる」と思っているかのようです。もっと本音で真面目に訴えればいいのにと思います。
マイナ保険証(強いてはマイナンバーカード)のメリットは、事務作業の効率化、もっと言えば【行政の効率化】だと思っています。それをきちんと説明すればいいのに..
それを、「国民にどんなメリットがあるのか?」という野党やメディアの追究にたじろいだ結果、CMやチラシの様な説明になっているように感じます。
「今のままでは行政が破綻する。行政が効率的になれば国民全員にこんな恩恵がある」とはっきり言えば国民はついてくると思うのですが..

もの造りや商売でも同じです。取って付けたようなメリットばかり並べるのではなく、デメリットや弱点なども含めた全てを提示して、総合的に判断してもらうという姿勢が大切なのではないでしょうか?
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