今年は5月から真夏のような暑い日が続き、梅雨どきにあまり雨が降らずに深刻な水不足に陥っていましたが、8月に入って豪雨が続いて各地に大きな災害をもたらしました。
今回は、そんなニュースを見ていて思ったことを述べたいと思います。
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何だかこのごろ、日本の四季がおかしくなってきているように感じます。いわゆる「異常気象」「気候変動」でしょうか。気候がいままでにない様相になっていることは間違いないと思います。これまで雨が降っていた時期に降らなくなり、あまり降らなかった時期にまとまった雨が降るようになりました。また、世界的には、これまで適度に降っていた雨が降らなくなり砂漠化が進んでいる一方、大規模な洪水が各所で頻発しています。
これらは、地球上の風の流れが変ったためだと私は考えています。地球上には、大気循環という空気の大きな流れがあり、それによって風や雲の流れが調和を保っています。毎年季節ごとに同じようなルートで循環しているのです。
大気循環模式図(ウィキペディアから引用)

最近、この循環構造が乱れているため、降るべき時期や場所に雨が降らず、本来降らないはずの時期や場所に降るようになった.. そう考えています。
これまで安定的に流れていた大気の循環が、何らかの原因でかき乱されたのです。まるで、カップに入ったコーヒーをスプーンでひと混ぜしたかのように。それにより、大気の流れが変わったことで災害が発生している.. というのが私の持論です。
地球温暖化が異常気象の原因であると言われていますが、その真偽はともかくとして、その “ひと混ぜ” が単発的なものであれば乱れはやがて沈静化します。流れる水は、流れた先で窪みに溜まって落着きます。渦は放っておけばそのうち消えます。それが自然の摂理です。
状態が安定すれば、それに応じて事態は落ち着きます。地球の温度が昔より上がったとしても、その状態で落ち着けば、その温度において安定した状態の大気循環になります。大気循環の形が昔と変わることで雨の場所や季節がこれまでと変わるかも知れませんが、それでも落ち着きます。落ち着けば、予測でき、想定でき、治水や灌漑などの対策を取ることができます。そうして文明は発展していきました。
今の異常気象の最大の問題は、「地球が暖かくなった」という単発的なものではありません。「地球が暖かくなり続けている」ことが大きな問題なのです。変化し続けている状態では手を打つことができません。大気循環をかき混ぜ続けている原因を何とかしない限り、予測や想定ができず、治水や灌漑を頑張っても切りがない。私はそう考えています。
品質も同じです。不良を生む原因を何とかしない限り、修理や交換を頑張っても切りがありません。作業が遅れる原因を何とかしない限り、残業や休日出勤で頑張っても切りがありません。発生し続ける異常事態をモグラ叩きで対処しても切りがないのです。問題が続いている時は、まず沈静化させて予測と想定が出来るようにしたうえで、それを改善する対策を講じることが必要だと考えます。
ちなみに、大気循環に対して “海洋循環” というものもあります。映画『デイ・アフター・トゥモロー』は海洋循環の乱れがもたらす災害を描いています。興味がある方はご覧ください。
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非常時には状態を安定させて事態を沈静化することが不可欠ですが、平常時において安定はとても退屈です。
・日本の文化は四季による季節の変化によって育まれてきました。変化するからこそ美しいのです。
・毎日晴天が続いていても困ります。雨も時には楽しいものです。
・毎日同じものを食べていると飽きます。時には “ちょい足し” したくなります。
・同じ作業を繰り返していると集中力が切れてミスを犯しやすくなります。集中力を維持するためには、適度な変化(ストレスとリラックス)が必要です。
安定が長く続くと “停滞” や “劣化” を生みます。逆に不安定や変化が進歩を生みます。
歴史を見ても、技術の進歩は困難から生まれてきました。「困った、どうしよう」という思いが工夫を生むのです。例えば、(不謹慎な例ですが)技術は戦争の際に飛躍的に発展してきました。
困った時こそ飛躍するチャンスです。ピンチを成長の糧にしましょう。
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急激な変化はすぐに気が付きますが、少しずつの変化は気づきにくいものです。
・昔、テレビ番組で「アハ体験」というものがありました。とても難しい体験でしたが、気づいてしまえばすぐに分かる現象で、興味深くみていました。アハ体験を知らない人は、動画を検索してみてください。
・同居家族が老いたことには気づかなくても、しばらく会っていなかった友人と久しぶりに再会した時、あまりの変わり様に驚いたことがあります。
・癌は気が付かないうちに進行します。ジワジワと悪化していることに気が付かず、気づいた時には手遅れ.. ということをよく聞きます。
・温暖化もそうです。100年前から気温が1℃以上上昇したと言われてもピンときませんが、その影響は確実に起きています。
・生物が進化する裏には滅んでいく種があります。それは、長い時間をかけてゆっくりと、気が付かないうちに..
品質や経営も同じです。気が付かないうちに設備が老朽化していたり、要員が育っていなかったりしていませんか? 外部環境の変化(市場、競合他社、新技術)や、組織体質の変化(例えば、覇気やチャレンジ精神の低下、事なかれ主義)に気づかないでいると、知らない間に滅び道を歩んでいるかも知れません。
“茹でガエル(※ 知らない人は検索)” にならないように気をつけましょう。
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《安定》と《変化》は両方とも重要ですが、安定が許されない世界があります。その一つが「経済の世界」です。もっと単純に言うと「企業活動の世界」「投資の世界」です。この世界では、常に成長し続けることが求められます。毎年、同じ売上高・同じ利益であることは許されない:そのままの位置に留まっていることは許されないのです。常に右肩上がりで成長し続けないと投資家から見放されてしまいます。
これは資本主義社会においては当たり前のことであり止むを得ないことですが、最近の “金に物を言わせる” を感じさせる様々な動きを見ていると、「未来は大丈夫か?」と少々心配になります。そう感じている人は少なくなく、一部の政治家や経済学者が【新しい資本主義】を唱えて動き始めているようですが、そうそう簡単には実現しないでしょう。
しかし私は、いずれは然るべく所に落ち着くと考えています。「乱れはやがて沈静化する。それが自然の摂理」だと思うからです。( ..落ち着く前に破裂して滅びの道を歩むことになるかも知れませんが)
実は、ISO9001も “そのままの位置に留まっている” ことが許されません。常に改善が求められているからです。ISO9001の目的は『顧客の満足』です。顧客が満足し続けるために、QMS(品質マネジメントシステム)を継続的に改善し続けることが求められているのです。
人間は欲深い生き物なので、顧客の要望は際限がないかも知れません。そうであれば、QMSの改善にも終わりがありません。しかし、もし仮に顧客が十分満足して要望がなくなったとしたら、QMSを改善する必要はありません。ISO9001の認証を維持する必要もなくなります。
実際、ISO9001の認証を取っていなくても優れた業績をあげている企業は多くあります。そういう企業は、自分たちの技術に絶対の自信を持っており、且つお客様と強固な信頼関係を築いています。すなわち、認証というお墨付きを得る必要がないのです。逆に言うと、ISO9001は、お客様との不安定な信頼関係を安定なものにするための橋渡しなのです。
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