業務フロー図とは、業務の作業の流れを視覚的に表した図です。
流れを表す図としては、処理の流れを表すフローチャートや構造化チャート(※)がありますが、業務フロー図は特に《複数の役割や担当間の連携》を表す際に有効です。
※ 構造化チャートについては、記事「複雑なことを整理する|構造化プログラミング」参照
業務フロー図の書き方を解説したサイトがたくさんあるので、詳しく知りたい方はそちらを参考にしてください。ここでは、業務フロー図の概要と、それを私なりに応用した事例を紹介します。
業務フロー図を解説したサイトの多くは、時間軸と機能軸(部門や役割など)の2つの軸で流れを表現しています。時間軸を縦・横のどちらの軸に取るかは図の目的や作成者の好みによって異なりますが、私は多くの場合、時間軸を縦軸にします。理由は、フローをより細かく表現するに連れて描きたい作業が多くなった時、時間軸を長くする必要に迫られることがありますが、縦方向の方が伸ばして描きやすいからです。
簡単な例を挙げます。

これは、製造会社の業務を非常に単純化したフロー図ですが、実際には条件によって矢印が分岐して複雑になります。複雑な流れも、図示することで分かりやすくなります。
また、必要に応じて矢印の上に情報の伝達手段を付加することもあります(文書、メール、口頭など)。例えば、お客様から[電話]で問い合わせを受けて、[メール]で御見積書を送り、[書面]で注文をいただく.. など。
業務フロー図の最大の目的は、「この作業の後、次に何を行うか」や「どうなったら、この作業を行うか」を明らかにすることです。これにより、作業漏れやタイミングの誤りを防ぐことができます。
ですので、業務マニュアルや作業手順書の作成に有効です。実際、私は過去にISO9001に取り組んだ際、多くの手順書を業務フロー図で作成していました。
先ほどの例では業務フロー図を2軸で描いていましたが、時には2軸以外で書くこともあります。その実例を示します。

これは、拙著「ソフトウェアの品質管理 -専門家が教えない大切なこと- 」で用いている図です。是正処置管理において、4つの役割がどうように連携しているかがお分かりいただけると思います。
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次に、業務フロー図による分析の例を挙げます。
自宅の最寄り駅に大きな地下駐車場があります。30分無料なので駅近辺にちょっとした用事がある際によく利用しているのですが、ときどきやらかします。その “やらかし” の構造を業務フロー図で表してみます。
まず、駐車30分未満(無料)の場合のフローは次の通りです。

ゲート機能の〈清算〉と〈ゲートオープン〉はシステムとして連携しているはずです。30分未満の場合、清算は無料なので、利用者からすれば[駐車券挿入 → ゲートオープン → 出庫]の流れになります。ほぼ条件反射的に体に染みついています。
ところが、ときどき時間をオーバーしてしまい支払いが発生することがあります。その場合、駐車場専用のプリペイドカードを利用しています。この時、この駐車場の機械は、清算が終わると直ぐに(プリペイドカードが戻る前に)ゲートが開きます。本来なら、出てきたプリペイドカードを抜き取ってから出庫すべきなのですが、急いでいたり何かに気を取られている時に、カードを取らずに出庫してしまうことがあります。気が付いた時はゲートが閉じてしまって戻れません。こんなことが過去に2回ありました。

おそらく、ゲートの機能としては、〈清算〉が終わったら〈カード返却〉と〈ゲートオープン〉を同時に行っているのだと思います。先ほどの “駐車30分未満(無料)” のフローに、カード返却の処理を単純に加えただけです。
ところが、[ゲートオープン → 出庫]が染みついている利用者の中には、カードを取るのを忘れて出庫してしまう人がいるというわけです。「カードを取り忘れるのが悪い」とも言えますが、ホスピタリティを考えれば駐車場として改善すべきことがあるでしょう。
フローを考えると、〈カード返却〉と〈ゲートオープン〉を同時に行うことが問題だと考えます。これを、カードを返却して回収されたことを確認してからゲートを開けるようにすれば問題は解決します。システム的にはそれほど難しいことではないはずです。
もう一つの改善策として、挿入式ではなくタッチ決済にすることも考えられます。これなら取り忘れるということがありません。駅に直結している駐車場なので交通系ICカード決済が出来ればとても便利なので、早くそうして欲しいと願っています。
以上はゲート側から考えた問題点と改善策でしたが、利用者側から見たときの解決策は業務フロー図からは思いつきません。強いて挙げれば、プロペイドカードではなく現金清算にすれば問題を小さく出来るかも知れません。釣銭が出るチャリーンという音で気がつきやすいのと、取り忘れても損害が小さくて済むからです。
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以上、業務フロー図を用いた分析例(問題点と改善策)でした。当たり前だと思っていることで問題が頻発している場合には、業務フロー図で作業の流れを図にして整理してみてはいかがでしょうか。
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