サービスの品質について考える

これまで、このブログでは多くの「品質」について述べてきましたが、「サービスの品質」についてほとんど触れてきませんでした。今回は、サービス品質をどう考えればいいかについての持論を述べたいと思います。それによって、なぜサービス品質について触れてこなかったのかを分かっていただけると思います。

目次
最初に結論
サービスとは
ISO9001におけるサービスの扱い
製品とサービスの性質の違い

最初に結論

 ”サービス品質への向き合い方” と “製品品質への向き合い方” に大きな違いはない。
 サービス品質と製品品質を区別する必要はない。

品質への向き合い方は、製品品質もサービス品質も同じです。違うのは、その対象固有の性質によるものであり、それによって重要な品質特性とそうでないものがあります。「製品だから、サービスだから」というカテゴリ分けにあまり意味はありません。
向き合う対象の性質によって重要視すべき品質特性は異なります。その違いは “製品品質” 同士でもあります。例えば、洗濯機と掃除機では求められる品質特性が違います。”製品” と “サービス” の違いを考えることは、”洗濯機” と “掃除機” の違いを考えることと同じです。
また、サービスにいろいろなものがあるように、サービス品質もいろいろあります。美容院、マッサージ、タクシー、結婚相談所などに求められる品質は、それぞれかなり違いますね。
ですので、殊更「サービス品質とは? 製品品質と何が違うのか?」と思い悩む必要はありません。

これまでこのブログでは製品品質・プロセス品質・経営品質などを想定して書いていますが、ほとんどがサービスの品質についても当てはまります。ISO9001、PDCA、顧客満足、苦情/クレーム、トラブル対応、原因改善、データ分析、教育、断捨離・・・ すべてサービスにも関わることです。
(唯一、記事「チラシの品質」だけ異質。”商売の世界” は、製品品質やサービス品質とは全く異なる世界)

サービスとは

現在、世の中で使われている『サービス』という言葉は、大きく分けると次の3つに分類することができます。
 1. 行為を主契約とする契約(顧客満足の源泉)
 2. 主契約に付随する物や行為(付帯サービス)
 3. セールストーク・セールスツール(お得感を演出する言葉)

それらをまとめたものが下の表です。

ここで、”業界” の「主に、」の意味は、「製造業とサービス業に明確な線引きはない」ということを表しています。例えば飲食店は、「料理を作って提供する」という “製造業” の一面もあれば、「大切な人との素敵な場を提供する」という “サービス業” の一面もあります。”業界” や “業種” というのは、経済統計や証券会社や就職案内などで《便宜的》に用いる分類項目であり、明確に「これはこれ、あれはあれ」と決められるものではないのです。ですので、この表は「一般的に製造業と呼ばれる業界では製品を引き渡すことが中心。サービス業と呼ばれる業界ではサービスを行うことが中心」という程度にとらえてください。

サービスについて解説しているサイトの中には、「形があるものが製品、形がないものがサービス」と説明しているものがありますが、ソフトウェアには形がありませんが製品として引き渡します。
また、「お客様に引き渡す物が製品、お客様に対して行う行為がサービス」としているサイトもありますが、付帯サービスの中にはお客様に渡す “モノ” も含まれます。

「1. 主契約である行為」と「2. 主契約に付随する物や行為」の品質は、顧客満足に直接影響します。一方「3. セールストーク・セールスツール」の質は、売れるか売れないかには影響しますが顧客満足には直結しません。先に述べましたが、”商売の世界” は製品品質やサービス品質とは全く異なる世界です。ISO9001は品質の規格ですが、その目的は “お客様の満足” なので対象となるのは「1」と「2」であり、”商売の世界” の品質である「3. セールストーク・セールスツール」としての “サービス” は対象外です。

ISO9001におけるサービスの扱い

ISO9001(JISQ9001:2015)の要求項目には、「サービス」という言葉が全部で78個あります。このうち、76個は「製品」又は「製造」とセットで使われています。残りの2個は、注記において例として挙げられた名詞(メンテナンスサービス、付帯サービス)なので、ISO9001ではサービスと製品(又は製造)は同じ扱いになっていると言えます。

さらに、製品(製造)とサービスがセットで記述されているもののうち「製品及びサービス」と記述されているものが全部で67個あります。つまり、76ヶ所中67ヶ所(88%)は、”製品” と “サービス” が完全に同じ扱いなのです。それ以外の9ヶ所の表現は、「製品・サービス」「製造及び(又は)サービス提供」「製造する製品、提供するサービス」「製品の引渡し後、サービスの提供中又は提供後」という表現ですが、想定する場面に応じて表現方法が違っています。しかし、意味的には “製品” と “サービス” は同じ扱いです。

製品(製造)とサービスがセットで記述されているもののうち、「製品及びサービス」以外の記述(9ヶ所)は、次の要求項目に集中しています。

8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理
 外部から提供される製品・サービスに対して行わなければならない管理項目が記載されています。

8.5 製造及びサービス提供
 製造及びサービス提供の際に行わなければならない管理項目が記載されています。

8.7 不適合なアウトプットの管理
 製品の引渡し後やサービスの提供中又は提供後に問題が発生した場合に行わなければならない管理項目が記載されています。

8.4は委託先から提供される場面、8.5はお客様に提供する場面、8.7はその両方です。つまり、製品とサービスの表現の違いは、《提供する又は提供される場面》で起こることが分かります。その表現の違いは、製品とサービスの性質の違いによるものです。
【製品】・・・・・ 渡すモノ
【サービス】・・・ 行うコト

これは、先ほどの表で示したことと同じです。

このように、ISO9001では製品とサービスについて行うべき管理項目を区別していません。QMSの範囲、顧客重視、リスク、品質目標と計画、資源や環境、力量、文書管理、要求事項の管理、設計・開発、リリース、監視・測定・分析、改善 などなど。すべて同じように求められています。「製品だから」「サービスだから」という違いはありません。

製品とサービスの性質の違い

製品品質とサービス品質で行わなければならない管理項目に違いはありませんが、その性質の違いによって具体的な管理のやり方が変わるものがあります。その性質の違いとは、『製品 … 渡すモノ、サービス … 行うコト』ですが、その違いによって、取り組む際に気をつけなければならないことがあるのです。それは、お客様が満足/不満足を感じるタイミングです。製品とサービスの決定的な違いはここにあると言えます。具体的には、

【製品】……… 提供された後、それを使って初めて満足/不満足が決まる。
【サービス】… 提供された瞬間に、満足/不満足が決まる。

つまり、製品は提供されてから満足/不満足を感じるまでに一定の間が空きますが、サービスでは提供した瞬間に満足/不満足が決まります。この違いは、品質管理を考えるうえで極めて重要なことです。特に重要な管理場面を2つ挙げます。

重要な管理1:事前確認(検証、検査)
製品(渡すモノ)は、出荷後に問題が見つかった場合に交換することがあります。リコール、自主回収、返品対応など。それはそれで顧客満足に悪影響を及ぼしますが、早いうちに(お客様が使う前に)対応すれば比較的傷は小さくて済みます。
しかしサービス(行うコト)は、提供された瞬間に満足/不満足が決まるので、やってしまうと取り返しがつきません。ですので、新たなサービスを企画して開始する前には、徹底した検討と確認(シミュレーション、模擬実施など)が必要です。また、新たな要員に対しては、徹底した訓練が必要です。

重要な管理2:顧客満足調査(アンケート)
製品(渡すモノ)は、提供された直後(使う前)に満足/不満足を聞かれても答えようがありません。一定時間置いてからヒヤリングするのが効果的です。まだ使っていないのに「アンケートにお答えください」と聞かれると少しイラっとしませんか?
一方、サービス(行うコト)は、提供した直後に「いかがでしたか?」と聞くのが効果的です。時間が経ってから改めて聞かれると間が抜けた感じがします。
顧客満足調査(購入アンケート)は、お客様が最も満足/不満足を感じているタイミングで実施することが重要です。その見極めはアンケート実施者の能力にかかっています。

以上、サービス品質をどう考えればいいかについての持論を述べました。

再度結論
 ”サービス品質への向き合い方” と “製品品質への向き合い方” に大きな違いはありません。
 製品とサービスの違いを気にするよりも、提供する対象(モノやコト)の品質特性を考えましょう。

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