受講報告(顧客価値経営のコンセプト)

私は、講演会や講座などに参加すると報告書を作成することを心掛けています。
今回は、経営品質セルフアセッサーの資格更新講座の受講報告です。今回のテーマは「顧客価値経営のコンセプト」です。
「なぜ学習報告を作成するのか?」については記事『「憶えた」と「分かった」の違い』をご覧ください。


2025年度 経営品質協議会セルフアセッサー認定更新講座
 2026年1月9日オンライン受講

【0】コンセプトを考える
コンセプトによって売上やシェアは劇的に変わる。
コンセプトは機能を列挙することではない。顧客価値を創造すること。
例えば、
・コカコーラ:「コークがあれば、上手くいく」→ 清涼飲料市場から食卓へ(ポジション変更)
・レッドブル:「冒険者を称え、翼をさずける」→ 一晩中踊り明かす若者に訴求
コンセプトを作る手順や汎用的な公式はない。自分流の発想法を持つしかない。視野の広さや興味の多様さが、多くの独自の発想を生む下地となる。
顧客価値経営のコンセプトを考えることは、顧客価値を追求する経営である。「経営」はマネジメントであり、マネジメントは時に「管理」とも訳されるが、経営と管理は全くの別物。
◇ 管理 … 効率の追求(短期的視点)
◇ 経営 … 価値の追求(長期的視点)

顧客価値を追求するコンセプトを生み出す7つの取組みを、以下で説明する。

【1】ありたい姿から今を考える
ありたい姿に必要なこと
取るべき行動を具体的にイメージできること(物語として)
◇ 変革者やリーダーが「実現したい」と自ら考えたこと
◇ そのために必要なこと(不足していること)が分かること

物語を想像するプロセス
①「ありたい姿」を設定する
②「ありたい姿」に関連する出来事を選ぶ
③それらの出来事の順序を決める
④これらの出来事の因果関係や影響関係を明らかにする
⑤物語の始点である「今の姿」を設定する

【2】創発の機会を増やす
創発とは、現場における学習・対話・相互作用によって革新的なアイデアや価値を生み出すこと。
創発は非計画的・偶発的に発生する。トップダウンやマネジメントからは生まれない。
創発を生むためには、メンバー同士が話し合って、実現したい状態の具体的なイメージを共有すること(意味生成)が必要。それが “変革” 。
「こうでなければならない」的な “計画” や “管理” は行き過ぎると創発の障害となる。多くの人々が対話し、変革のイメージを共有することで、多くのアイデアとモチベーションが引き出される。

【3】意味・価値を探求し続ける
企業は製品・サービスの様々な価値を組み合わせて提案する。顧客はそれらを自分の事情や都合や好みに応じて解釈する(意味づける)。企業が提案した価値の組み合わせが顧客に意味づけられたとき、顧客価値が実現したといえる

価値の要素は様々。顧客価値は幾つかの価値が集まっているので、分解して考える必要がある。
◇機能的価値と情緒的価値(定量的価値、定性的価値)
◇必需的価値と魅力的価値(当たり前品質、魅力的品質)
◇パフォーマンス・インパクト分析(期待度と満足度のクロス分析)
◇コンセプト・パフォーマンス・バランス(購入前後のパフォーマンス評価比較)

顧客満足の価値比較は同じ領域における比較が中心だが、製品開発における価値検討はコンセプトやポジショニングによる独自性が重要。次のようなアプローチによって従来品との差別化を図る。
◇ 価値転換(中心となる価値要素を転換する)
◇ 価値組み換え(強化する要素と低下させる要素のメリハリ)
◇ 価値増幅(期待に応えることで新たな期待を生み出す)
◇ 価値絞り込み(特定の顧客タイプに絞り込む)
◇ 価値革新(価値の目的を変える【例】ローソク:灯り → ムードづくり)
◇ 価値適応(状況に応じた価値を提供する)

【4】様々な手段を尽くして、理解を深める
知識が少ない時は、浅い理解しかできない。知識が増えると深い理解ができるようになる。豊富な知識を総動員して物事を解釈する(解釈し直す)ことができる。これを「センス・メーキング」や「腹落ちする」と言う。

技術主導の考え方(性能競争)に染まっていると、競合メーカーとの開発競争の罠にはまってしまう。差別化を狙うと逆に業界自体が同質化してしまうことがある。
問題意識がなければ問題やアイデアに気がつかない。「わかったつもり」からは問題意識や仮説は生まれない。それでは新製品開発や改良のアイデアは出てこない。「わかってるさ、そんなこと」が思考を止める。業界の固定観念から抜け出すことが大切。

【5】思索的に対話を深める
あるテーマについて結論を出さなければならない場合、討論や議論をしなければならない。しかし最初から結論を急ぐと感情的対立が先に立って話し合いがうまくいかない。そこで、結論を急がず互いの意見を理解して納得しながら話し合う必要がある。これを「対話」と言う。
個人の行為が個人の思考によって行われるのと同じように、集団の行為は集団の思考(すなわち話し合い)によって成されなければならない。
良い人間関係が対話を生むのではなく、対話そのものが関係を良い方向に変えていく。

話し合いには全員が守るべきルールがある
◇メンテナンス(グループを形成・維持する)
 ・メンバーをはげます。友好的に接する。尊重する。
 ・調停する。和解させる。緊張を緩和する。
 ・譲歩する。妥協する。逃げない。
 ・コミュニケーションを促進する。参加を促す。
 ・目標を設定する。ルールを設定する。
◇タスク(課題を達成する)
 ・新たにはじめる。自ら提案する。他の人が始めるのを待たない。
 ・情報や意見を求める。事実を求める。提案を求める。
 ・情報や意見を提供する。事実、アイデアを提供する。
 ・明確化する。掘り下げる。他の可能性や問題点を指摘する。
 ・集約する。関連していることをまとめる。結論や決定を示す。
 ・意見の一致(合意がされていること、されていないこと)を確認する。

意味のある対話を行うためには、意見を言うことよりも質問や確認することに注力する。
 ・他の意見や主張にすぐに反応しない。保留する。
 ・相手の意見や主張を受け入れ、それをよく考える。

【6】洞察の習慣を創る
普通に「そういうものだ」と思われていたことを、それまでとは違う見方で捉えて、異なる意味やあり方を想像することを「文脈を読む」と言う。センス・メーキングとは、新しい文脈を読み取ること。

「見る」ことと「観察する」ことは全く違う。観察は見て考えること。見て「へー」や「フーン」で終わってしまっては何も生まれない。どうなっているのか(状態)、なぜそうなっているのか(理由、因果)、変えたらどうなるのか(仮説)などを常に考えていることが必要。つまり、思考(洞察)の習慣づけ。

思考法は、教わったからといって直ぐにできるものではない。何度も同じ様に繰り返し考えているうちに自然とできるようになる。意識しなくても脳がそう考えるようになる。それが新たな文脈の気づきにつながる。

【7】制約条件を変える
ビジネススクールや企業の管理者研修では、与えられた制約条件下における利益の極大化や原価率の最小化などが教えられる。つまり、制約条件に変化が起きないことを前提としている。そのため、制約条件を変える(挑戦する)という発想が生まれにくい。
機能別に部門が構成されている組織(機能別組織)における各部門の最も重要な使命は、部門内における効率追求である。機能別組織は機能を追究する組織なので、中間管理者は自分の職務の維持・効率化に注力する。つまり、部門内という制約条件下での取り組みである。そのため、事業全体の視点が欠如し、新たな価値創造や革新が生まれない。

◇管理職と変革者の違い
・ビジョン:〈管理職〉トップダウン  〈変革者〉自分たちが作る
・業績評価:〈管理職〉目標との比較  〈変革者〉他社との比較
・スキルUp:〈管理職〉戦略的・体系的 〈変革者〉流動的・予測不能
・人育育成:〈管理職〉動機付け重視  〈変革者〉「革新への勇気」を重視
・能力発揮:〈管理職〉作業計画を重視 〈変革者〉能力を引き出すことを重視
・情報展開:〈管理職〉上下方向の流れ 〈変革者〉水平方向(ネットワーク)
・変革への取り組み方
  〈管理職〉組織を頻繁に変えるが、通常の業務遂行と同じ様に計画して管理する。
  〈変革者〉部門や上下関係を越えた人的ネットワークと、現場の行動を重視する。

管理職のように『与えられた条件の中で働く』ことと、変革者のように『制約条件そのものを創り出す』ことは全く違う。

## 所感 ##
とても多くの共感と気づきを得ることができた。
特に、次の2点は日頃から思っていたことであり、自分の考えが裏付けられて嬉しく感じた。
◇新たな発想は、幅広い知識が脳内ネットワークで結びつこととで生まれる。
◇顧客価値は、企業が提供する価値が顧客の事情や都合や好みと合致した時に実現する。

また、次の2点は理解はできるが実行するのはかなり難しいと感じている。
◇結論を急ぐと対立を生む。言いたいことは一旦保留して、相手の言うことをじっくり聞いて確認することが重要。分かってはいるが、つい反応してしまいがち。
◇マネジメント・計画・管理は、行き過ぎると創発の障害となる。かといって管理しなければ無秩序な組織になってしまう。組織を統制しつつ、如何にして変革者を否定せずに新たな発想を生み出すか、極めて難しい問題である。

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