「悟り・修行・出家」と聞くと、とても難しく大変そうと思うのではないでしょうか。しかし、それに “プチ” をつけると私たちにも実践できる身近なものになります。そしてそれは、品質だけでなくあらゆる行動に役立ちます。
まず、本当の「悟り・修行・出家」について簡単に説明します。
これらはすべて仏教に関わる言葉です。もともとブッダの教えとは、苦しみから逃れる(正確には、苦しみを感じなくなる)ための方法です。この、”苦しみから逃れる” 方法を会得することが【悟り】です。そして、それは教えてもらっただけでは得ることが出来ず、段階を踏んで自ら体感していく必要があります。その “悟りを得るため” のステップが【修行】です。さらに、修行に専念するためにそれ以外のことをすべて捨て去ることが【出家】です。
ですので、「出家して修行しているお坊さんはさぞかし大変なんだろうな」と思うのは間違いです。なぜなら、彼らは、悟りを得たいという目的に集中(出家)できているからです。やりたい事に集中している人は、それを苦労とは思わないでしょう。
それでは、仏教の教えを自分たちの現実社会に応用してみましょう。
まず、その目的です。ブッダのもともとの教えは、老・病・死という苦しみから逃れることでしたが、現実社会での目的は「幸せに生きる」こととします。何が幸せかは人によって違うかも知れませんが、「イライラ・クヨクヨ・アタフタ」しないで日々を過ごしたいという気持ちは共通だと思います。イライラ・クヨクヨ・アタフタしていれば楽しくありませんし、いい仕事もできません。当然、品質の良い成果を得ることができません。今回は、そうならないための方法について考えます。
【プチ悟り】… 小さなことに幸せを感じる
皆さんはどんな時に幸せを感じるでしょうか。例えば、一流企業に就職できた、昇進した、給料が上がった、高級レストランでフルコースを食べた、ブランド品を手に入れた、海外旅行に行った、宝くじが当たった……。高望みしていませんか?
大きな望みや夢を持つことが悪いとは言いません。それらは生きる原動力になります。しかし、それが得られないことをボヤいたり、持っている人を羨み妬んでばかりいる人は、まさに不幸と言えるでしょう。
それよりも、もっと身近な幸せに目を向けてみませんか。例えば、街路樹の若葉が伸びている、車窓から虹が見えた、コンビニで新商品を見つけた、上司に褒められた、部下に頼りにされた、作業が早く終わった、前よりもうまくできた、などなど。幸せは、案外身近にあります。その小さな幸せを、見逃さず、気づき、探すうちに、心が幸せで満たされるでしょう。
【プチ修行】… 心の使い方の練習
親の小言、言うことをきかない子供、分かってくれない上司、ミスをする自分、などなど、腹が立つことやイライラすることは多いですね。腹を立てれば人間関係がギクシャクします。イライラすればミスが増えます。それは不幸なことです。そして、そんな状況を作り出した(自分を不幸にした)モノやコトにまたイライラします。不幸の悪循環です。
そうならないために、心をコントロールする練習をしましょう。特に、次の2つをお勧めします。
①イラッとしても直ぐに反応しない。
ほとんどの怒りは30秒もすれば少し落ち着きます。何か言われても、直ぐに言い返さないで30秒我慢してみましょう。理想は「何があっても反応しない心」ですが、凡人には難しいのでまずは30秒だけ我慢してみましょう。
②今の自分に目を向ける
「あの人がこう言った」と怒るのではなく、「私は今(こう言われて)怒っている」と考えましょう。イライラしたら「あぁ、私は今イライラしているな」と考えるのです。そして、今の自分の状態を観察しましょう。怒りで震えている声や握り締めている手の感触に神経を集中しましょう。自分自身を見つめることで心に冷静さが戻ります。
また、失敗したときは過去を悔やんでクヨクヨするのではなく、今その時やるべきことに集中しましょう。過去を振り返って反省することは必要ですが、それはあくまでも “今” を正しく行動するためです。無駄に過去に引きずられないようにしましょう。
【プチ出家】… やりたいことにエネルギーを注ぐ
「あれもやりたい、これもやりたい」と欲張って、結局どちらも成果が出なかったということがありませんか? やりたいことは一つに絞って集中した方が成果につながります。一つのことを成し遂げてから次のことに取り組むことを心掛けましょう。
そして、何かを成し遂げるためには、何かを犠牲にする覚悟も必要です。仏教の出家では、悟りを得るために仕事や家族や財産を捨てて修行に集中します。本当に欲しい何かを得るためには、別の何かを捨てる覚悟が必要な時があります。以前の記事『勉強の真の目的、学校の勉強の意味』において《想像力と覚悟》について触れましたが、この “覚悟” とはまさにプチ出家のことです。学校の勉強以外の何かに本気で取り組むなら、それによって何を失うかを想像し、その覚悟を持ちましょう。
プチ出家を実践している人はたくさんいます。例えば、キングカズこと三浦知良選手や、大リーガーの大谷翔平選手です。彼らは、生活のすべてをサッカーや野球に捧げています。華やかな選手生活の裏には、我々のような凡人にとっては不幸としか思えない犠牲や苦労を重ねているのです。そして彼らは、それを自らの意志で喜んで行っています。まさに出家人生です。
「有名になれ」とか「大成功しろ」と言っているのではありません。「本当にやりたいことに集中する」ことが大切なのです。そして、やりたいことに集中するためには、必ず周囲の助けが必要になります。修行僧は、修行に集中するため仕事が出来ないので、他人に食べ物を分けてもらいます。それが “托鉢(たくはつ)” です。プチ出家でも、家族や友人などの助けが必要です。ですので、常に感謝の気持ちを持ちましょう。感謝の心が無い人は誰にも助けてもらえません。
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以上、仏教の教えを現代に応用して「幸せに生きる、幸せに過ごす」ことを考えました。
どうですか? 悟り・修行・出家が身近になってきませんか? ぜひ、プチ悟り、プチ修行、プチ出家を実践して、クオリティの高い成果を出して幸せをつかんでください。
参考書籍1 「小さな悟り」
「人生、人間関係、仕事、老い、将来」の5つのテーマについて、それらの悩みに対するアドバイスが全部で99個載っています。1つのテーマが見開き2ページとなっていて、とても読みやすい本です。
参考書籍2 「これも修行のうち」
「感覚、感情、考え方、意欲」の4つのテーマについて、とても簡単な修行法が50個載っています。また、テーマ毎に解説が書かれており、とても分かりやすい本です。
参考書籍3 「ブッダに学ぶやり抜く力」
「自己変革のメソッド、自分で自らを変える、集団の中で自らを変える」の3部構成で、”出家的人生” を勧めています。現代において出家的人生を送っている実例が載っており、とても興味深い本です。
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