データ分析事例(新型コロナ感染症)

私は、プライベートでもよくExcelを使っています。例えば、旅行の行程や費用見積り、お小遣いやクレジットの管理などで日常的に使っています。また、それ以外にも気になるデータがあればグラフにしてみたりしています。今回は、私が個人的に行ったデータ分析の中で特に興味深かった経験をお見せします。新型コロナ感染症の推移データです。

新型コロナ感染症は、2020年から世界的に大流行し、日本でも社会生活に大きな影響をもたらしました。連日「感染者○○人、死者△△人」というニュースが報じられ、憂鬱な日々を過ごしました。報道番組の解説は感染者数の推移と予防の重要性を説く内容ばかりで、データ分析として物足りなさを感じていました。そんな時、厚生労働省が新型コロナ感染症関係のデータを公開していることを知り、自分なりに分析を始めました。公開データには様々なものがありましたが、今回は「感染者数、重症者数、死者数」についての分析グラフをお見せします。

定期的に厚生労働省のホームページからデータを入手して、週単位にグラフ化しました。お見せするグラフは、2021年1月から2023年4月までを切り取っています。ちょうど、第3波から第8波までの期間です。

「感染者数」「重症者数」「死者数」を、目盛スケールを変えて同じグラフにプロットしています。ですので、感染者数・重症者数・死者数の線はそれぞれスケールが異なるので注意してください。3つの線の大小を比べるのではなく、同じ線の推移やピークの変化を見てください。
このグラフから、次のことが読み取れます。

◇感染者数のピーク:徐々に増加し、第6波、第7波で急激に増加。
◇重症者数のピーク:第5波をピークに、徐々に減少。
◇死者数のピーク :第5波までは大きな変化はないが、第6波から急激に増加。
◇感染者数のピークの約2週間後に重症者数がピークとなり、その2週間後に死者数がピークとなる。

第6波と第7波の頃の「感染者数急増」のニュースはかなり加熱していました。しかし、その頃私は、潮目が変わったことに気が付き「そろそろ収束に向かう」と思っていました。
その時見ていた分析グラフが次です。

このグラフは、「重症者数を感染者数で割った値(感染者が重症化する率)」と「死者数を感染者数で割った値(重症者が死亡する率)」をプロットしたものです。つまり、「感染した人のうち、どれくらいの人が重症化しているか」と、「重症化した人のうち、どれぐらいの人が亡くなっているか」の傾向を示しています。(それぞれのピークには2週間のタイムラグがあるので厳密にはブレますが、傾向は分かります)
このグラフから分かるように、2022年に入った第6波から明らかに傾向が変化しています。

◇「感染者が重症化する率」の波が収束。下止まり。
◇「重症者が死亡する率」が増加。2023年から減少。

つまり、第5波から第6波の間に次のような潮目の変化があったと言えます。
感染しても重症化するリスクは小さくなったが、重症化してしまった人は死亡するリスクが高い。

これは、感染者数が増加、重症者数が減少、死者数が増加したことで、
 「感染者が重症化する率」の、分母が大きくなって分子が小さくなった
 「重症者が死亡する率」の、分母が小さくなって分子が大きくなった
ためです。

その原因として考えられることは幾つかあります。
①ワクチン接種が本格化して重症化が抑えられた。ワクチンは感染予防よりも重症化予防に効果大。
②デルタ株の特性(感染力は大きいが、毒性は比較的弱い)
③ハイリスク者(高齢者や基礎疾患のある人)にとって①②の影響は小さい。
④これまで守られてきたハイリスク者にも感染が拡大した。
⑤集計の精度が変化(正確になった、または “重症” の定義が変わった)

特に、「重症者が死亡する率」が高まった原因は、
『健常者が重症化しなくなったので重症者の全体数が減ったものの、ハイリスク者が重症化して死亡する率は相変わらず高いため、相対的に分母が小さく分子が大きくなった』
と考えられます。つまり、

健常者にとっての脅威は小さくなったが、ハイリスク者にとっては相変わらず大きな脅威

と言えると思います。

実際、その後の政府の対応は、感染者全体の抑え込みから、ハイリスク者対応重視へシフトしていきました。


以上、私のデータ分析事例(新型コロナ感染症の推移)でした。このように、データを見るときは、個々の値の大小だけを見て一喜一憂するのではなく、ピークの変化や他のデータとの関連性など、いろいろな観点で注意深くみることを心がけましょう。

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