ISO9001の誤解2(業務マニュアル)

 今回は、前回に続いてISO9001に対する2つ目の誤解について解説します。

【誤解2】ISO9001規格の章立ての通りに業務マニュアルを作らなくてはならない。

 昔のISO9001規格(具体的には1987年の初版と1994年版)を経験したことのある人によくみられます。実際、2000年版の規格が出るまでは、業務マニュアル体系を規格と同じ章立てにすることが一般的であり、過去に私も著書「ISO9001認証取得への道しるべ」の中でそのように勧めていました。しかし、2000年の改訂から一変しました。作業マニュアル体系を規格の章立てに合わせなくてもよい、むしろ積極的に実務に合わせることが求められるようになったのです。このことは、現在の規格にも引き継がれています。現在の2015年版の規格(JIS Q 9001:2015)には次のように記述されています。

 これは、仕事の手順の中にISO9001規格の内容を組み入れる(実務マニュアルに融合させる)ことを意味します。《実務のためのマニュアル》と《ISO9001審査のためのマニュアル》の二本立て(ダブルスタンダード)ではダメなのです。

 これからISO9001取得を目指す組織には次のように取り組むことをお勧めしています。
  ①組織内にあるすべての業務の一覧を作成して、各業務の関連を明示する。
  ②各業務のマニュアルを作成する。(業務の重要性に応じた記述レベルで)
  ③業務マニュアル内でのISO9001の網羅性を確認して、不足しているものを加筆する。
  ④ISO9001審査用資料として、ISO9001から業務マニュアルへの逆引き表を用意する。
 また、すでに認証を取得しているものの「運用が大変」「効果が感じられない(品質が良くならない)」「審査が面倒」などと感じている組織も、これを試してみてはいかがでしょうか。少なくとも、業務マニュアルとISO9001が融合しているか(業務マニュアルがISO9001審査のためのマニュアルになっていないか)を確認することは必要だと思います。

 ①を示すものとして、まず下記のようなプロセス体系図を作成することをお勧めします。これにより、ISO9001と実務の関係確認だけでなく、社内プロセス体系の見直しにもつながります。また、業務マニュアルの目次や、マニュアルをWeb化して社内展開する際のトップページにも流用できます。内容は組織によって違うと思いますので、実体に合わせてお作りください。

業務プロセス体系図〈例〉

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