今回は、たくさんの言語情報(言葉による情報)を整理して分析する手法である『親和図法』について解説します。
親和図法とは、一見するとバラバラな情報群を、親和性(関連性)に基づいてグループ化していき、それらが示している本質的な意味を見出すための手法です。
文化人類学者の川喜田二郎(かわきた じろう)氏によって考案された手法であり、そのイニシャルを取って「KJ法」と呼ばれていました。KJ法が海外に紹介された際の訳語 “Affinity Diagram(親和図法)” が逆輸入され、日本でも「親和図法」が一般的になりました。今でも「KJ法」と呼んでいる人もいますが、「KJ法 = 親和図法」と考えて問題ありません。
※ 厳密には、KJ法は発想法(整理後の解釈から新たな発想まで)であり、親和図法はKJ法を基にした(整理に特化した)図解化技法です。
親和図法を解説する書籍やサイトは、事細かな説明からザックリ解説するものまでいろいろあります。今回は、私の経験上「ここは重要」と感じたことをお伝えします。”整理の技法” ではなく、日頃の仕事や日常生活においても役に立つ “心がけ” だと思ってください。
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最初に、親和図法の基本的なステップについて説明します。
1.情報のカード化
集まった情報を1件1葉で書き出す作業です。
情報には事実や意見など様々なものがあります。また、それらを収集する手段は、紙(メモやアンケート)、電子(メール、SNS、集計表)など様々です。それらの情報を1件ごとに別々のカードに書き写すのです。お勧めは、大きめの付箋(5cm程度)です。よく、刑事ドラマで付箋を壁に貼り付けて謎解きをするシーンがありますが、あれです。パソコンを使ってもできますが、後々張り付け直すことになるので専用ソフトが必要になるでしょう。経験上、紙の付箋がもっとも使いやすいと思います。
2.グループ化
カード群を眺めて、内容が似ているものを集めてグループ化する作業です。グループ化は直感(なんとなく)で構いません。このときのコツは「共通のタイトルを付けるとしたら…」を考えることです。実は、これは次の3.の作業につながります。
どのグループにも属さないカードは、無理にどこかのグループに含めずにそのままにしておきます。
3.グループの見出し作り
グループ化したカードをまとめて、グループ内全体に共通する見出しを付けます。紙の付箋を用いている場合は、グループ化したカード群を輪ゴムで束ねた上に色の違う付箋に書いた見出しを載せるとよいでしょう。
2~3を、それ以上グループ化ができなくなるまで繰り返します。これにより、見出しの入れ子(中グループや大グループなど)が生まれます。
4.展開(図解化)
グループ化したカード群を、グループ毎にまとめながら(グループ見出しで括りながら)すべて展開します。
この時、相反するグループ同士や因果関係にあるグループ同士がある場合は、”対立” や “原因・結果” を矢印などで表します。ちなみに、”類似” の関係はさらにグループ化できるので2~3に戻ります。
例を作ってみました。AIで元ネタを作って手直ししたものです。
とあるパン屋に寄せられた「お客様の声」の分析です。
お客様から次の15件の “声” が寄せられたとして、それらをカード化しました。
・午後2時を過ぎると、棚がスカスカで選ぶ楽しみがない
・レジ袋が有料化されてから、まとめ買いをしなくなった
・カレーパンの具が日によって多い時と少ない時がある
・通路が狭くて、ベビーカーのお客さんが入るのを諦めていた。
・レジ待ちの列がパンの棚を塞いでしまい商品が手に取れない
・インスタで見た限定商品を目当てに来たが、売り切れていて残念
・店員さんの笑顔は素敵だが、パンの包装に時間がかかり過ぎている
・商品毎に、焼きあがり時間を掲示してほしい
・駐車場が2台分しかなく、いつも満車で通り過ぎてしまう
・全粒粉や低糖質など、健康を意識したパンをもっと増やしてほしい
・トングが少し重くて、子供や高齢者が使いにくそうにしている
・惣菜パンの味付けが、少し塩辛くなったような気がする
・会計の際、ポイントカードの説明が店員によってバラバラで分かりにくい
・買ったばかりのパンをすぐに食べたいので、外にベンチを置いてほしい
・季節のフルーツを使ったデニッシュは、すぐに売り切れてしまう
それらを整理した親和図が次です。

これにより、「機会損失」「物理的な障害」「スタッフの対応」「既存顧客のロイヤリティ」という問題が浮き彫りになりました。
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次に、親和図法を用いる際に特に気をつけなければならないことを3つ示します。実体験から感じたことです。
1.情報の質を揃える
「情報の質」というのは、[範囲] や [細かさ] や [表現] のことです。
・情報の範囲を揃えるためには、集める際にできるだけ絞り込む(限定する)必要があります。例えば、お客様の声を集める際に「何でもお寄せください」とすると、改善事項だけでなく、良かった点や感謝の言葉まで寄せられます。それらは、情報のカード化の際に除外する必要があります。
・事細かい内容と大雑把な内容を同じ手法で分析することはできません。情報をカードにする際には、集まった情報を適度な細かさにそろえる必要があります。
・情報カードは1枚につき1件である必要があります。複数の内容があると、グループ化する際に戸惑ったり間違えたりするからです。しかし、寄せられる意見の中には、複数の情報がまとめて記述されていることがよくあります。それらの情報をカードにする際には、分離して別々のカードに記載する必要があります。
これらの事は、親和図法に限ったことではありません。アンケートではよくあることです。アンケート結果を行う際には “データの精査” が必要不可欠です。
(記事『アンケート調査で気をつけること』参照)
2.分類に陥らない
親和性に基づいたグループ化は “分類” ではありません。実は、親和図法を分析手法であると間違って理解している人がかなり多くいます。先日の講演会でも、講師の方がしきりに「KJ法で分類して..」と言っていました。偉い先生でも誤解している人が多いのです。
分類は、あらかじめカテゴリーを決めておいて、与えられたモノを降り分けていくことです。例えば『気象』というカテゴリーがあったとします。このとき、「真夏日だった」という情報と「初雪が舞った」という情報は、どちらもここに降り分けられることになります。意味的には真逆の情報ですよね。
親和図法は、親和性に基づいてグループ化します。親和性とは “内容が似ている” ということです。あらかじめ分類するためのカテゴリーは用意しません。データ同士を眺めながら「この2つは似ているな」と、似ている要素を積み上げていくのです。
分類が「トップダウンでカテゴリーを決める」のに対して、「ボトムアップで似ていることに気づく」のが親和図法です。
3.個人の主観を主張しすぎない
「似ている」と感じるのは個人の主観です。複数の人間で親和図法やKJ法に取り組む時は、「似ている/似ていない」や「こっちの方がもっと近い」など意見が違うことで争うことがないように気をつけましょう。よく話し合うことが重要です。
話し合っても意見が食い違う場合、多くは「情報のカード化」に問題があります。カードの内容をより明確に書き直してみましょう。
「似ている」は個人の主観なので、個人で分析する場合、人によって結果が異なる場合があります。それは決して問題があるということではありません。親和図法は、唯一無二の答えを探す手法ではなく、気づきを得るための手法です。何をどう気づくかは人それぞれです。
気づきは、心がけていればいろいろなことを通して得ることができます。日頃から、常に気づきを求め、新たな発見に気づくことを心がけましょう。そのひとつとして、複数の人間で親和図法に取り組むこともお勧めです。「こんな考えもあるのか…」と気づくことがあります。
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以上、親和図法のステップと注意点を述べました。情報を整理する際、分類することは大切ですが、新たな気づきを得るためには親和性に注目することも大切です。また、親和性を考えることは日常生活にも役立ちます。目の前にある幾つかの事について、親和性(共通点と相違点)を考える習慣を身に付けましょう。
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