俺は木綿のハンカチーフが大嫌い

今回のこの奇妙なタイトルは、太田裕美の「木綿のハンカチーフ」と、藤岡藤巻の「俺はラブソングが大嫌い」という楽曲名を組み合わせたものです。今回は、この2つの楽曲を通して、人としてやってはいけない行動について語りたいと思います。品質には直接関係はないですが、モチベーションに大きく影響するので取り上げます。過去記事「やる気にさせる方法」とは反対の、「やる気を削ぐ行動」のお話です。

「木綿のハンカチーフ」は、女性の視点で描いた失恋ソングです。彼氏の心が自分から離れてしまうまでの様子を描いています。1975年にリリースされ大流行しました。50年近くも昔の楽曲ですが、とても流行っていたので私と同年代の人で知らない人はいないと思います。

私は、この歌が大嫌いです。曲がテレビやラジオから流れるとチャンネルを変えてしまうほど嫌いです。好きな方には申し訳ないのですが、聞いていられないくらい本当に嫌いなんです。ファンのみなさん、ごめんなさい。

この歌が流行ったのは私が高校生になった頃です。その頃の私は、この歌にそれほど強い思いはなく、ただ「かわいそうな歌」としか感じていませんでした。しかし、社会人になってから徐々に嫌いになっていきました。働き始めてから価値観が変わったのかも知れません。

この主人公の行動が許せなくなってきたのです。心変わりした彼氏のことではありません。フラれた女性の行動がです。

その行動とは、彼氏の好意に対して全て「いいえ」で返していることです。
歌詞を要約します。(詳しく知りたい方は検索してください)

 彼氏「君へ贈りもの探すつもりだ」
 彼女「いいえ、私は欲しいものはないのよ」
 彼氏「都会で流行りの指輪を贈るよ、君に似合うはずだ」
 彼女「いいえ、ダイヤも真珠も、あなたのキスほどきらめくはずないもの」
 彼氏「見間違うようなスーツ着た僕の写真を見てくれ」
 彼女「いいえ、草にねころぶあなたが好きだったの~」

もしあなたが、こちらから投げかけた好意に対して全て「いいえ」で返されたらどう思いますか? 私なら、すごく嫌な気分になります。「ありがとうのひとことがなぜ言えない !!」と思います。

結局、この二人は破局を迎えます。
 彼氏「君を忘れて変わっていく僕を許して。僕は帰れない」
 彼女「最後のわがまま、涙ふく木綿のハンカチーフください」

私はこの歌を “失恋ソング” として嫌いなわけではありません。社会人としてやってはいけない行動だから嫌いなのです。人から何かしてもらったら、まず感謝の言葉を返すのが当たり前だと思うからです。たとえそれが望んでいないことだとして、まずは感謝の言葉を返すべきです。先ほどのやりとりで言えば、次のように応えるのが大人の行動だと思います。

 「ありがとう。でも、私は欲しいものはないのよ」
 「ありがとう。でも、あなたのキスの方がもっとうれしい」
 「すてきね。でも、草にねころぶあなたが好き」

これに対して、フラれた女性の肩を持つ人はいます。特に女性は、感情移入して「彼女がかわいそう。彼氏がひどい」と思う人が多いのではないでしょうか。私の知り合いにもいました。ですが、立場を変えて考えてみてください。好きな人に向けた好意が全て「いいや」で返されたらどう感じますか?

 彼女「あなたへのプレゼントを選んでいるの」
 彼氏「いいや、僕は欲しいものはないよ」
 彼女「あなたに似合いそうなネクタイをプレゼントするわ」
 彼氏「いいや、君と一緒にいられることの方がうれしい」
 彼女「見て。新しいワンピースを着てみたの」
 彼氏「いいや、芝生にねころぶ君が好きだった」

これでも楽しいですか?

このようなことは恋愛の時だけではありません。会社や学校、家庭でも起こります。
上司や先輩のあなた! 頼んでいたことが終わったとき、「ありがとう」も言わずに、「やり方が違う」とか「期待していたものと違う」と言っていませんか? モチベーションを下げていますよ。
家事で忙しいあなた! 手伝ってくれた家族に、「ありがとう」も言わずに、「これはこうやるの」とか「次はもっとちゃんとやって」と言っていませんか? 信頼関係ガタガタですよ。特に子供は傷つきます。
何かあった時、条件反射的に「いいえ」「イヤ」「ダメ」「無理」などネガティブな言葉が出る人は、特に注意しましょう。

藤岡藤巻の「俺はラブソングが大嫌い」の歌詞に、次のような一節があります。

♪ たまに口を開いても 文句しか言わない女
  これと昔デートしていたなんて
  確実に言えることは 冷めない恋などあり得ない
  ラブソングなんて みんなウソだ ♪

これは、「木綿のハンカチーフ」に共感する人達に対する、オヤジからの(ある意味)痛烈なアンサーソングであるように感じます。


藤岡藤巻は、自虐ネタを得意とするコミック・オヤジ・ディオです。妻や上司や若者や社会に対する “ささやかな” 抵抗と、自分へのエールが盛り込まれていて、多くの曲がオヤジである私の心にささっています。

「俺は~が大嫌い」シリーズは、ラブソングの他にも、演歌、フォーク、ヘビメタなどがあり、どれも面白いです。他にも、聞いていて思わず吹き出してしまいそうになる曲がたくさんあります。

藤岡藤巻の楽曲の中で、私がもっとも好きな曲が「贈られる言葉」です。かの有名な楽曲は教師が卒業生に “贈る言葉” ですが、こちらは定年退職する人が自分を見送る社員から “贈られる言葉” です。定年を迎えた男性の悲哀を描いた歌詞が自分のことのように感じられて、実際の定年退職の前後は毎日のように聞いていました。

歌詞の一つ一つが心に刺さりますが、次の2つは特に心に響きます。

♪ たんたんと年下の部長がしゃべりだす
  私のこの人生を簡単にまとめやがる
  「いい人でした」「慕われていた」「面倒見がよかった」と
  歯の浮くような 贈られる言葉 ♪

♪ 最後に乗る下りの京浜東北線
  満員電車にももう乗ることもないんだ
  会社では今頃はもう話題にさえなってない
  誰もが忘れてる 贈られる言葉 ♪

そんな自虐ネタ満載の楽曲ですが、最後は藤岡藤巻にしては珍しく前向きな言葉で締めています。

♪ ネクタイをはずしたら何かがほどけていった
  私は歩き続ける まだ旅は終わりじゃない ♪

これを聞くと、少しだけ気持ちが前向きになります。

興味を持たれた方はぜひ聴いてみて下さい。CDはもう売られていないので中古でしか手に入りませんが、音楽配信サイトで聴くことができます。
「贈られる言葉」と「俺はラブソングが大嫌い」は、アルバム『藤岡藤巻Ⅲ』に収録されています。

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