「守破離」とは、日本の武道(柔道や剣道など)や芸道(茶道や落語など)、いわゆる “その道” を究めるための修行の過程を表した言葉です。
これは、”品質の道” を究めることにも当てはまりますので、今回は品質の世界における守破離について述べたいと思います。
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「守」とは、教わった基本の型を忠実に守ることです。
品質の世界における「守」とは、ルールや手順を守ることです。会社や学校には、目的や意味が分からない規則や手順がたくさんあると思います。そんな時、最初から「こんなのやってられない」と拒絶するのではなく、まずはそのルールや手順を守ってみましょう。やってみて初めて分かることもあります。そこで気づいたことが次の「破」につながります。やってみなければ議論の場にも登れません。新しい組織に入った頃は、組織のルールややり方を愚直に守ることが大切です。
「破」とは、敢えて基本の型を破って独自の技を追究することです。
ただ闇雲に型を破るのではありません。基本の型が身についていないうちはやってはいけません。基本の型をしっかりやれるようになった上で、より自分に合うやり方や、時代にマッチした新たな型を追究するのです。
品質の世界における「破」とは、改善活動です。改善にはいろいろなものがあります。例えば、ルールや手順の改善、道具の改善、管理表の改善、コミュニケーションの改善 などなど。これらは全て「業務改善」です。改善のタネは至る所にあります。常に「もっとよくなる方法はないか?」と気を配りましょう。
改善は、今までのやり方を少し変えることなので見ようによっては「ルール違反」です。ですので、会社で改善を行う際は決められたルールに従って行わなければなりません。具体的には、計画を立てて・承認を受けて・関係者に周知しなければなりません。一般的に、これらは改善計画書やプロジェクト計画書などで行います。
プロジェクト計画とは、基本的な段取りをベースにして、案件固有の条件を加味することです。つまり、プロジェクト計画書は、基本ルールとの差異を明示することが大きな目的の一つです。
このように、品質の世界における「破」は、基本を大切に・計画的に・公に行うものです。
また、改善は最初から全てがうまくいくとは限りません。むしろ、うまくいかないことの方が多いでしょう。想定した効果が見られなかったら、原因を調べて改善策を変えて再度チャレンジしましょう。つまり、計画して実行して反省して再チャレンジする … PDCAです。
「離」とは、新たな技を究めたら、これまでの型にとらわれない(型から離れる)ことです。とらわれないという意味では断捨離の “離” に似ています。
品質の世界における「離」とは、新しいルールや手順を定着させて(古いルールから離れて)、品質マネジメントシステムを進化し続けることです。また、まったく新しい技術を導入することもこれにあたります。この時、昔のやり方に固執せずに新しいルールや手順を守ることが大切です。
また、組織には変化を嫌う人間が必ずいます。「これまでうまくいっていたのだから変える必要はない」と言い張る人が出てきます。そんな時は、自分が手本となって率先して実践し、効果を実証しましょう。

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これらの言い方を少し変えると次のように言うことができます。
【守】いつもの決まったやり方(手順、ルール)
【破】今までのやり方と少し変える(改善、プロジェクト計画)
【離】大きく変える(変革、イノベーション)
これは、記事「家事と品質」でも出てきましたね。実は、家事には守破離が満載です。例えば料理。
【守】我が家の味(いつものホッとする味)
【破】アレンジ、ちょい足し
【離】新たなレシピ(時短レシピ、料亭の味)
業務改善は、実は家でのご飯づくりと同じなんです。
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