前回の記事『判定者の役割と裁量』では、判定者(例えば、審判や出荷判定者など)の役割(権限と裁量)について述べましたが、今回は「どういう人が判定者になるのか(命じられるのか)」についてお話します。また、そのような人を育てたり、判定の適切性を保証するための取り組みの事例を紹介します。
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出荷判定者とは、物作りの会社において「この製品を出荷してよい」と出荷の可否を最終的に判断する人のことです。若い人にとっては「ベテランさん」とか「偉い人」くらいにしか思っていないかも知れませんが、どんな会社にも出荷の可否判断について何らかの客観的な基準があるはずです。その基準のひとつが判定者の要件です。「勘が鋭い人」とか「勢いで判断できる人」が判定するとしたら、そんな製品は心配で買えないですよね。もしかすると暗黙的なものかも知れませんが、何らかの決め事があるはずです。 ※ ISO9001では、その決め事を明確にすることが求められている。
会社に入って間もない人はまだ分からないかも知れませんが、「出荷を許可する人」が誰なのか確認してみてください。自分の仕事が最終的に誰にどのように判断されて世の中に出るのかを考えることは、与えられた仕事の重要性を認識することにつながります。
出荷判定者は、次の4つの資質やスキルを身に付けていることが必要です。会社は、そういう人を出荷判定者に任命しています。 ※ 逆に言うと、そういう人を任命しなければならない。勘や勢いだけではダメ。
出荷判定者に必要な4つの資質
(1) 製品の機能と、お客様にとっての価値を理解している
・製品が満たしていなければならない要件を理解している
・不適切な製品を提供した時、お客様にどのような迷惑をかけるか理解している
(2) 製品を生み出し提供するプロセス(やり方)を理解している
・プロセスと品質データの関連性(整合性や因果関係)を理解している
→ 不自然なデータや作業報告を察知できる
・そのプロセスからどんな問題が起こりそうか想定できる(逆の推測も)
(3) 品質管理や品質保証に関する知識や経験がある
・提示されたデータや記録を読み解くことができる
・適切に指摘し、的確な報告書を作成できる
(4) 出荷の是非について公平に判断できる
・合否によって利害が左右される立場にない(部門や役職に影響されない)
・人間関係(恩義、好き嫌いなど)や圧力に流されない
これは出荷判定に限らず工程移行判定でも同じです。また、物作りだけではなくサービス提供でも同じです。さらに言えば、ほとんどの《判定》において言えることです。つまり、何らかの判定を行う人は次のことを満たしている必要があるのです。

QMSの審査員(ISO9001認証)もこれを満たしています。私は自社以外の審査を行ったことはありませんが、審査員補の資格を持っているので、公の審査員がどうやって上記の要件を満たしているのか想像できます。
私の場合、審査員の資格を得るために品質管理の研修を2つ受けました。1つは審査員研修で、ISO9001の内容と審査技術を学びました。もう一つはQCに関する研修で、統計や検定などを学びました。これが上記の《要件》③です。
私はここまでですが、公の審査員になる人は審査機関に所属して、各機関独自の育成プログラムによって①②④を学ぶことになります。私は経験がないので以下想像です。
・①と②は被審査組織によって違うので具体的なことを学ぶことはできません。しかし、審査の際は必ず最初に組織のトップにヒヤリングしてその組織のQMSの背景や重視していることを聞き取るので、おそらく審査講習の際にはそのヒヤリングのやり方を学ぶのではないかと思います。
・審査員補は最初はベテラン審査員に就いて指導を受けながら経験を積みます。その際に④の指導を受けると共に、適切性を評価されるのだと思います。
ちなみに、審査機関もその適切性をチェックされます。それには2つあります。一つは、審査・認証機関としての適切性。もう一つは、国際的な相互認証の適合性。これにより、日本の審査機関で認証を得れば海外でも通用するのです。
このように、QMSの審査は2重3重に “判定者と判定の適切性” を担保しているのです。
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次に、〈内部品質監査〉について考えてみます。
内部品質監査とは、企業が自ら構築した品質マネジメントシステム(QMS )が、「守られているか」「効果を出しているか」「もっと良くできるところはないか」を、自社でチェックすることです。いわば品質に関する “セルフ健康診断” です。内部品質監査を行うことは、ISO9001で明確に求められています。
内部品質監査はQMSが正しく運用されているかを “判定” することなので、その監査員も判定者と言えます。
私は、かつて務めていた会社で『内部品質監査を運営する立場(品質保証部門)』と『内部監査員を育成する立場(教育部門)』の両方に携わっていたのでその経験をお話しします。
まず内部品質監査の体制ですが、その会社では専任の監査員や監査チームは設けずに、監査を受ける部門以外の部門から監査員を選出して部門クロス(ほとんど開発部門同士)でやっていました。(そのようにQMSを設計した)
部門クロスにした理由は、多くの社員にQMSや他部門の作業について関心を持ってもらうためです。専任の監査員を設けた方が内部監査の効率や精度は良くなりますが、現場にとってはどうしても “人ごと” になり、品質意識が根付きません。それを懸念したのです。
その中で品質部門は、内部監査の運営(年間計画、調整、指示)、監査報告書の確認&指導、まとめ&会社トップへの報告を担いました。
各部門から監査員を選出するため、定期的に内部監査員養成研修を実施して監査技術を身に付けた要員を育成しました。また、受講者は内部監査員資格者として名簿に登録して管理しました。
内部品質監査は、1年単位で日程と対象部門(される側、する側)を計画して、実施して、結果をQMSに反映しました。
そのおおまかな流れは次の通りです。

この中で、上記の《要件》をどうやって担保したかを以下説明します。
要件①:内部監査の冒頭で監査対象の概要をヒヤリング
(そのような監査プログラムにするように指導)
要件②:開発プロセスは標準化されており基本部分は共通(既知)
詳細は部門マニュアルで確認。
要件③:内部品質監査員養成研修で、監査の目的や手順を指導
【研修カリキュラム】全2日間
1日目午前:ISO9001とQMSの解説 … 重要な項目に絞って
午後:監査の目的と手順の解説 … 座学
2日目午前:ケーススタディ(個人) … 事象例を元に、何を根拠にどう指摘するかを体験
午後:ロールプレイ(チーム) … 監査の会話記録を元に、実際の監査報告書を作成
要件④:・年間計画で、監査される側と監査する側が同じにならないように設定
・対象案件と監査員の選定の際、提示された候補から無作為に選択
・監査報告の確認において不適切な内容を指導
これらで内部品質監査を完璧に行えるわけではありませんが、ある程度の中立性と有効性を確保できたと思っています。内部品質監査でお悩みの方は参考にしてください。
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誰かが何かを判断(判定)する必要がある時、いい加減な人に委ねるわけにはいきませんね。大切なことを誰かに委ねる時には信頼できる人でなければなりません。技術的に信頼でき、且つ人間的にも信頼できる人です。そのようなQMSを作ると共に、自分自身が信頼される人間になれるよう努力しましょう。
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