前回の記事『チェックリストで大切なこと』において、「未熟者と熟練者とで扱い方を分けることは、 “作業の標準化(手順書化)” において永遠の課題です」と述べました。このことはとても重要なことであり、2冊の書籍でも繰り返し述べてきました。
そこで今回は、書籍の内容を再編して、『標準化』とその先にあるとても重要なことについてお話しします。
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まず、その前提となる “標準” と “標準化” という言葉について認識を合わせておきたいと思います。
【標準】を辞書で引くと、おおむね次の2つの意味であると書かれています。
① 基準、基本 … 例)標準サイズ、標準装備、標準時
② 一般的、平均的 … 例)標準世帯、標準体型、標準語
同じ言葉なのに意味が違うのは困りますね。しかも、微妙に似ているので混乱します。
私は、【標準】に類する言葉について次のようなイメージをもっています。
① 標準 … 手順書、規約、ルールブック
② 標準化 … 手順書を作成すること、または手順や部品を共通化する取り組み
③ 標準的 … 一般的(見本やサンプルはその例)
④ xx標準 … xxの手順書
⑤ 標準xx … xxの一般的なやり方
以降、“標準化” を「手順書作成」「手順の共通化」の意味で話を進めます。
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1.手順書を用いる目的・メリット
手順を明文化したもの(すなわち手順書)を用いる目的は何でしょうか?
多くの人は「作業ミスを減らすため」と答えると思います。それでは、手順書があると何故作業ミスが減るのでしょうか?
それは、作業の拠りどころに沿って作業するからです。正しい手順が書かれている文書を手元に置いて、それに沿って作業するから正しく作業できるのです。分からない作業を分からないまま行うことがなくなり、間違って覚えていたまま作業することがなくなります。だからミスが減るのです。
また、やり方が分からなくなった時にいちいち人に聞かなくてもよいため、効率的であり、精神的ストレスも減ります。
つまり、手順書は「作業の基準(ブレない正解を示すもの)」です。
2.手順書を用いるデメリット
手順書を確認しながら作業すると、その分時間がかかります。つまり効率が悪化します。
作業に慣れていない人は作業ミスを防ぐために手順書を沿って作業する方が良いですが、ベテランはいちいちチェックなどせずにサッと先へ進むことができます。もし手順書を用いることを強要されれば、「そんなこといちいちやっていられるか!」と反発するでしょう。
手順書を用いると、未熟者の品質や作業効率を一定水準にまで引き上げますが、熟練者のパフォーマンスを下げます。つまり、手順書を用いるか否かの判断は、”未熟者の戦力化” と “熟練者の有効活用” を天秤にかけることなのです。
また、人間は何かに頼ってばかりいると考えることを止めてしまいます。未熟者が手順書に頼ってばかりでは、自分で考えないのでいつまで経っても成長しません。これも、手順書を用いることの大きなデメリットです。未熟者を戦力として用いながらどうやって育成するか.. 標準化を考える上で大きな課題です。
3.標準化を進める目的
次に、会社が標準化を進める理由を考えてみましょう。これまでは個人が手順書を用いることについて考えてきましたが、会社全体で標準化を進めることで個人の場合とは違う効果が見えてきます。
(1) 最低品質の底上げ
手順の標準化とは、「皆、同じやり方で作業する」ということです。同じやり方で作業すれば〈結果のバラツキ〉は小さくなります。バラツキが小さくなっても平均値は変わりませんが、値の範囲が狭くなることで許容範囲から外れるものが少なくなります。すなわち《不良》が減ります。

対象を〈不良〉から〈品質〉へ広げてみましょう。「品質のバラツキが小さい」ということは、「皆、同じような品質」ということです。言い換えると、[品質が素晴らしく良い物] と [とんでもなく悪い物] が少ないということです。
お客様にとっての品質(メーカーの信用)は、最低品質の製品によって決まります。なぜなら、たとえ多くの製品が素晴らしい品質であっても、たった1個の不良品によって会社は信用を失うことがあるからです。ですので、[とんでもなく悪い物] が少ないと会社の信用(品質)はアップし、逆に多いと信用はダウンします。
これは製品に限ったことではありません。それを作る人やチームにも言えることです。つまり、会社の品質は最低品質の物・人・チームで決まるのです。
標準化によってバラツキを小さくすることで低品質の物・人・チームが底上げされ、[とんでもなく悪い物] (例えば事故)が減り、お客様の信用がアップします。お客様の信用が “会社の品質” です。

一方、バラツキを抑えると、 [品質が素晴らしく良い物] も減ります。製品品質(product quality)として均一性を重視する工業製品では問題ないのですが、芸術性(artistic quality)として個性を重視する世界では「皆、同じようなもの」は許されません。標準化を進める際には、業界・業種・業務を見極める必要があります。
(2) 改善の土台
会社は、社内の平均品質を改善するために様々な施策を実施します。その際、どのレベルの人やチームをターゲットにするかによって、施策の実現度や効果に大きな差が生じます。多くの場合は低レベルの人を想定した施策になるでしょう。その結果、せっかく施策を実行しても大きな効果は期待出来ません。また、レベルの高い人に低レベルの施策を強いると、効果が小さいどころかモチベーションを下げることにもなりかねません。この「どのレベルをターゲットにした施策にするか」という問題を解決するためには、全員のレベルを一定水準にしておく必要があります。すなわち、「作業の共通化」が必要になるのです。

(3) 技術の継承
人によって作業品質が違うと、作られた製品の品質も変わります。作った人によって品質が変わるのです。物によって品質が違うと、依頼した人は「こっちは大丈夫だろうか..」と不安になります。やがて信用されなくなります。ですので、物づくりにおいては出来るだけ属人性を排除することが必要です。これは、担当が熟練者から未熟者へ変わった時にも言えます。「担当が未熟者に変わったので品質が悪くなりました」とは言えないのです。
熟練者から未熟者へ技術やノウハウを伝える際には、手順書を用いることをお勧めします。理由は次の2つです。
①言って聞かせるよりも早く確実に伝わる
②曖昧な知見(経験や記憶)を形にできる
手順書は、新たな要員に手順を教える “教材” であり、個人の知見を社内で共有する “ノウハウ集” でもあるのです。
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以上、手順書を用いる理由と、会社として標準化を進める理由でした。
手順書は、単に「ミスを減らすためのもの」ではありません。会社全体で取り組むことで、より大きな効果をもたらします。そのことを理解して手順書と向き合ってください。
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