前回の記事『判定者に必要な資質』では、判定者である内部監査員の要件について述べ、その要件を満たすためのヒント(ある組織の事例)を紹介しました。
今回は、内部品質監査を形だけでなく意味のあるものにするためのヒントについて述べます。私が長い経験の末に辿りついた “内部監査員の心得” です。
まず最初に、内部品質監査の目的について考えます。
皆さんは、内部品質監査は何のために行うものだと思いますか?
・ルールが守られていることを確認するため … 生存確認
・ルールを守っていない人を探すため … 悪者探し、粗探し
・ISO9001の認証を維持するため … 季節イベント
これらは間違いではありませんが真の目的ではありません。真の目的を忘れてこのような考えでやっても、内部監査をやる意味がありません。やる側も受ける側も時間の無駄です。
ISO9001:2015では、内部監査について次のことを求めています。
・QMSが守られていることを確認する。
・QMSが効果が表れていることを確認する。
・問題がある場合、直ぐに改善(修正 & 再発防止)する。
ここで、「QMSが守られているかの確認」と「QMSの効果が表れていることの確認」は、問題を見つけるためのステップであって真の目的ではありません。問題とはQMSの問題のことであり、例えば、QMSを守っていなかったり、QMSを守っても効果がない(例えば不良を出すなど)ことです。
では、なぜ問題を探すのでしょうか? それは、問題を直すことで組織がより良くなる(不良が減る、納期を守れる、生産性がアップする)からです。
つまり、内部品質監査は『 改善を促して組織をより良くするために行うもの 』です。それを忘れずに内部品質監査に取り組みましょう。
※ 内部監査だけでなく本審査も同じ。審査員はダメ出しする人ではなく、品質改善のアドバイザーです。
監査員は、粗探しや間違い探しを止めて、相手の改善につながる指摘を心がけましょう。
そのためには、最低限次の2つを心がけて指摘することが必要です。
①指摘された側が、指摘内容と指摘理由を理解できる。
②指摘された側が改善する気になる。
意味不明な指摘や、やる気を削ぐような言動をしてはいけません。
これを踏まえて、内部監査員が実際の監査において留意すべき心得を幾つか紹介します。私が経験から得たことです。 以下、拙著『ソフトウェアの品質管理 -専門家が教えない大切なこと- 』から転用
心得1: やってはいけないこと
内部監査で指摘する際に以下のことに注意しないと、指摘を受けた側が混乱して理解の妨げになります。
(1) 想像で指摘しない
悪い例:「~だと思われる」→「~であった」と事実だけを指摘する
(2) 1つの指摘で複数の問題点を指摘しない
悪い例:「〇〇は~であった。また□□は~であった」→ 2つの指摘に分ける
(3) 肯定と否定が混在する言い方をしない
悪い例:「〇〇はしていたが、△△はしていなかった」→ 問題のみ指摘する
心得2: 基準に照らして事実を指摘する
基準とは「何が正しいか」を示す根拠です。手順書、計画書、口頭での説明など、いろいろなものが基準になります。この、基準に対して事実がどうだったかを指摘することで、何が問題なのかが明確になります。例えば
「〇〇作業マニュアルでは△△することと定められているが、□□チームでは行っていなかった」
「プロジェクト計画では〇月〇日に実施となっているが、実際に実施したのは△月△日だった」
「A氏は〇〇を実施することになっていると言っていたが、B氏は□□を実施していた」
心得3: 指摘数は3個までに絞る
レベルが低い組織の場合、問題が何個も見つかることがあります。しかし、指摘を多く受けても改善出来る数には限界があります。結果、改善出来なかった指摘が目立つことになり、指摘を受けた側はやる気を無くしてしまいます。したがって、問題が多い場合には重要な問題に絞って指摘する方がよいでしょう。経験上、どんな組織でも3つに絞るのが有効です。被監査部門のレベルによって指摘のレベルが変わることになりますが、どんな組織でも3つまでなら改善しよういう意欲を持つことが出来ます。そのためには、その組織にとって何が重要なのかを見極めることが重要です。部門長やチームリーダーに予めインタビューしておくのも良いでしょう。
また、指摘する問題点が無い場合に、重箱の隅を突っつくようなことは避けるべきです。問題が無いなら「問題なし。良く出来ています」と報告する方が、現場をやる気にさせます。
心得4: 自分のやり方に固執しない
現場の裁量に任されている事に対して、監査員の経験や知識などを元に「違うやり方の方がいい」と指摘することは避けましょう。その組織にとっては、そのやり方が最良のやり方であり、その考えとやり方は尊重すべきです。指摘できるのは、そのやり方が原因で問題が発生したことが明らかな場合、あるいは問題が発生する危険がある場合だけです。例えば、
「レビュー管理表による障害管理は障害対応が漏れる危険があるので、障害管理は障害管理表を用いることが望ましい」
また、内部監査の域を超えて「こういうやり方もあるので検討してみては?」とアドバイスすることも有効です。その根底には「相手の環境をより良くするために」という姿勢が大切です。
心得5: 問題が見つかった時は、他でも同じ問題が起きていないか確認する
問題には、根深い問題(組織的・システム的・構造的な問題)と、偶発的な問題(たまたま起きた問題)があります。その状況下でたまたま起きた問題であれば、目くじらを立てて細かく指摘せずに、改善の機会として様子を見るという判断もできます。「日常的に起きているか」「他でも起きているか」を確認して、組織的な問題なのか、たまたま発生した問題なのか、見極めましょう。
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多くの審査機関では、一般的に指摘を次の2つの種別に分けています。
◆指摘事項 … 不適合
ISO9001の要求事項や社内で決めたルールに対して明らかに外れている場合です。いやゆる「アウト!」です。これを受けた組織は直ちに直す義務があります。放置すると認証が取り消されることがあります。内部監査では、その組織を厳重注意して、直ちに改善させることが必要です。
◆改善の機会 … オブザベーション(継続観察)というところもあります
明確なルール違反(不適合)とまでは言えない(一応ルールや基準は守っている)が、「将来ミスが起きるリスクが潜んでいる」というアドバイス的な指摘です。これをどう扱うかは監査を受けた組織の自由ですが、それが原因がミスが起きた場合には指摘事項になることがあります。
内部品質監査は、改善の機会を重視した取り組みと言えます。もちろん指摘事項を厳しく指摘することは必要ですが、無理やり指摘事項を探すのではなく、その部門にとって最も改善の効果が期待できる指摘に力を注ぐべきです。
「監査を受けた側に改善を促し、その成長に寄与する」という意識を忘れずに内部品質監査に取り組みましょう。
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