『皇室典範改正案』が国会で可決されました。私は皇室についてあまり詳しくなく、ニュースなどで天皇ご一家のご様子や公務のご様子を見るくらいでしたが、今回の件で少し勉強して多少知ることができました。そこで、今回の皇室典範改正の議論を私なりに整理してみました。そこには、過去に本ブログで扱ったテーマに関係することが多くありました。そして、これまで私が「会議のセオリー」だと思っていたこととは大きく違う世界がありました。
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まず、今回の改正案について簡単に説明します。
【改正の目的】公務を維持するために、皇族の数を安定的に確保する
【改正の背景】皇族が減っているため公務が維持できなくなる恐れがある
その背景には、今の皇室典範(皇室に関する法律)にある次の決まり事があります。
①女性皇族が一般男性と結婚する場合、皇籍を離れて一般国民になる
②皇族は養子を迎えることができない(他家からも一般からも)
【対策】策1:①を変更して、女性皇族が結婚後も皇族に残れるようにする
策2:②を変更して、旧宮家(戦争前までの皇族)から養子を迎えられるようにする
【意見】
意見1:策1だけを採用すべき
意見2:策2だけを採用すべき
意見3:両方の策を採用すべき
【結論】意見3で決着。ただし、難しい問題は先送り。
このように議論の構造は単純ですが、これに皇位継承の問題が絡んでおり、人それぞれの主義や思惑が交錯してかなり騒然としていました。
争点は、公式には明らかでありませんが、メディア等の解説を見るとどうやら次のことのようです。
【争点】女系の血筋を認めるか認めないか
直接的に言うと、「最初の天皇(神武天皇)のDNAを父親を介して引き継いでいない血筋を認めるか認めないか」です。
“女系” とは “女性” という意味ではなく「女性の血筋(母親を介した血筋)」という意味です。「 “男系” ではない」と捉えた方が分かりやすいでしょう。”男系” とは、父親を介してDNAが引き継がれている血筋のことです。歴代の天皇は神武天皇のDNAを父親を介して脈々と受け継いできました。過去に何度かそれが途絶えそうになったことがあり、その血脈が途絶える危機がありましたが、そのたびに執念でそのDNAを受け継ぐ者を探し出してきました。策1はそのルートが途絶える可能性を残しているので、意見2の支持者は頑なにそれに反対しているのです。今回は、意見1と意見2の両方に配慮した形で意見3に落ち着きましたが、この先もし “男系” を維持できなくなるような事態になれば、この問題は間違いなく再燃します。
以上をまとめたものが下の図です。

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この中身を見ると、本ブログで過去に取り上げたテーマに関係することが数多くあることが分かります。
1.問題とは、目指すレベルと現状との差(ギャップ)
『問題解決と課題解決のアプローチ』参照
今回の改正議論ではそれが示されていません。「皇族が減っているので公務が維持できなくなる」という問題を解決するための議論であるのに、”目指すレベル” と “現状” が示されていないのです。
そもそも《公務》とは何で、これまでどれくらいの人数で回していて、どれくらい足りなくなりそうで、どれくらい切羽詰まっているか、が全く分かりません。それが分からなければ、提示された案が良いか悪いか判断できるはずがないと思うのですが.. 何を議論しているのか不思議です。
議論している議員は分かっているのかも知れませんが、おそらく多くの民衆は分かっていないと思います。私も分かりません。メディアも、議論の内容を伝えているだけで、議論に必要な前提情報をまったく伝えていません。問題になっていることを報道する際には、「あるべき状態がこうなのに、現状はこうなっている」と解説して欲しいと思っています。
皆さんは、話し合いで問題を解決しようとするときには、”目指すレベル” と “現状” の認識を合わせてから議論に臨むようにしましょう。(今回の国会審議を反面教師として)
2.策が2つのとき、選択肢は2つだけとは限らない
『アンケート調査で気をつけること』参照
A案とB案の2つの案がある場合、選択肢は [A案がいい] [B案がいい] の2つだけではありません。[どちらでもいい] [どちらもダメ] もあります。と過去記事で述べましたが、今回はこれに加えて「両方必要」という選択肢もありました。そう考えると、他にも [どちらでもいいがどちらか1つ] と [どちらもダメ] という選択もあってよかったはずです。そう考えた人はいなかったのでしょうか?
「どちらでもいい」と考えた訳ではありませんが、採決を棄権した人は多くいたようです。その多くは、所属する政党から自分の主義と異なる動き(採決)を指示されたために、意思表示のために採決を棄権したようです。
また、「両方ダメ」という勢力もかなりいたようです。これは、意見1の強硬派と意見2の強硬派です。全く正反対の強硬派が、賛否だけで見れば意見が一致していたのです。仮にその総数が大きかったなら、今回可決した案は廃案になっていたかも知れません。賛否と採決のねじれ現象です。
皆さんが賛否を尋ねられた時は、自分の意見と一致する選択肢があるか確認しましょう。また、賛否を尋ねるときは、選択肢が正しいか(それだけか、曖昧でないか)をよく確認しましょう。
また、結論が出た後も、反対意見があったことは忘れないでください。結論に従うとしても意見が変わったわけではないのです。反対意見もひとつの意見として尊重しましょう。
3.メリットとデメリットを示す
『メリットとデメリットをちゃんと考えよう』参照
メリットとデメリットは、提供する側と提供される側の両方で考える必要があります。
特にビジネスでは、提案の際にお客様のメリットだけを並べていては信用されません。メリットとデメリットの両方を示したうえでお客様の判断を仰ぐのが鉄則です。お客様からデメリットを指摘されるようでは信用を失います。
しかし、今回の議論では、自分の意見(支持する案のメリット)と他の案のデメリットを主張するばかりで、自分が支持する案のデメリットについて自ら語る人はいませんでした。まるで、「デメリットに気づかれなければラッキー」と思っているかのようです。
メリットもデメリットもすべてを提示することが誠意ある提案だと思います。どんなものにもメリットとデメリットの両方があります。それを、メリットだけアピールしてデメリットを隠すのは卑怯と思われても仕方がありません。デメリットは自ら申告して改善策を提示すべきです。
皆さんが提案する際は、誠意ある提案を心がけてください。
4.根本→改善、根低→変革、根源→再定義
『根本・根底・根源 vs. 改善・変革・再定義』参照
根本的に見直すことを「改善」と言います。根底から見直すことを「変革・改革」と言います。根源から見直すことを経営の世界では「価値の再定義」と言います。
今回の議論は根源レベルの問題だと思います。男系の維持(つまり、神武天皇から始まるDNAの継承)なのですから、これ以上根源的なことはないと思います。それを、法律の改正という改善レベルの策で解決しようとするのは間違いだと思います。逆に、改善レベルの策で解決するのなら、根源的な理由は持ち出すべきではないと考えます。
皆さんが問題を解決しようとする際には、どういうレベルの問題なのかを見極めて、それにあったレベルの対策を行いましょう。
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ここからは私の思いです。一部、宗教的・イデオロギー的なことのように感じられるかも知れませんが、あくまでも品質的な見方での意見です。
「なぜ男系の血筋を守ることが重要なのか」について真剣に考えるべきではないでしょうか?
現在は「男系が絶対!」「女系も容認すべき!」と大声で叫びあっているだけです。それでは議論がまとまるはずがありません。
メディアはこの問題をタブー視して正面から向き合っていません。民衆の多くは「自分には関わりのないこと」と無関心です。
男系を主張する人は「伝統だから」と言います。それでは、なぜ伝統を守る必要があるのでしょうか?
ビジネスの世界では「伝統とは、時代に合わせて受け継いでいくこと。変化を頑なに拒む伝統は滅ぶ」とされています。ビジネスと皇室が違うのあればどう違うのかを示して欲しいと思います。今回の皇室典範改正の議論を見ていると、昔ながらのやり方にこだわって行き詰った会社が体面を繕うために粉飾決算を行っているようにさえ思えます。この際、皇室の在り方や宮内庁の在り方を根源から徹底的に考えてみた方が良いように思います。
これは、女系の容認を主張する人にも言えます。どこまで容認すべきで、それはなぜなのか明確に言えるでしょうか?
「当たり前なこと。今さら言うことではない」と言う人もいるでしょう。しかし、”当たり前” が誤解を生み、議論を崩壊し、対立を生むのです。
「理由など必要ない。尊い存在だから」と言う人もいるでしょう。それは “押し活” と同じです。
・・・・ 血筋へのこだわりを “押し活” と考えれば少し納得できます。恋心と同じように押し活には理由などないのですから。保守思想が強い人は “男系” という名のアイドルの押し活に励んでいる人なのかも知れません。もしかすると《女系の血筋を認めるか認めないか》の争いは、押し活同士の喧嘩なのかも.. あるいは、押し活に励む人と、その行動を理解できない人の言い争いか? なんだか、国会やメディアやネットでの争いがそう見えてきました。. . . そうだとすると、やっぱり “自分には関わりのないこと” だな。
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以上、皇室典範改正の議論を通して、議論の進め方について述べました。
会議など、意見・立場・主義・主張が異なる人たちが話し合って合意を形成する際にはセオリーがあります。
集団での意思決定のセオリー
(1) 認識を合わせる(言葉の定義、現状認識、何が問題か、解決の期限)
(2) お互いの主張を理解する(反論は後で)
(3) お互いの主張の相違点(争点)と共通点を明らかにする
(4) 妥協点を探る(取り引き、駆け引き、妥協)
会議に臨む際は、「集団での意思決定のセオリー」を頭において、実のある議論になるように心がけましょう。
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