近頃、「AI搭載」とPRしている家電が数多く出回っています。エアコン、洗濯機、冷蔵庫、ロボット掃除機、炊飯器、照明器具などなど。それについて私は、常々「これってAI?」と首を傾げています。そこで今回は、”AI家電”についてお話ししたいと思います。
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AI家電とはどういうものでしょうか?
例えば、エアコンで考えてみましょう。以下、多くの人が思っているであろうイメージをまとめてみました。あくまで私の個人的な想像です。

このように、”AI”が付くと、とても賢くて素晴らしいもののように感じますね。
一方、「AI家電とは?」という質問をAI(Copilot)に投げかけると、それまでの経緯によって答えが変わります。
(1) 何もない状態でいきなり聞いた時
『人工知能(AI)を搭載し、利用者の行動や環境を学習して自律的に最適な動作を行う次世代の家電製品。従来の家電は”設定通り”に動き、AI家電は”自分で考えて”動く。』
(2) AIの機械学習について少し議論した後で聞いた時
『AI家電とは、「AI(人工知能)」という言葉を使っているが、実態は”高度な制御+センサー+クラウド連携”をまとめてAIと呼んでいる家電の総称。本物のAI(機械学習モデル)が家電本体で動いているケースはほぼない。』
この違いは、【AIの定義】の違いによるものです。
以下、前回の記事『超解説:AIの仕組み』で述べた【AIの定義】のおさらいです。
①AIを研究する立場での定義
知能のメカニズムを人工的に再現する技術
②AIを提供する立場での定義
蓄積したデータを自律的に解析し模倣することで、結果の予測や最適解を提供するシステム
③AIを利用する立場での定義
膨大なデータから最適解を導くことで、知的作業(認知・判断・創出)を代替・支援するツール
上記(1)の「人工知能(AI)を搭載し~」は③の定義を元にしており、(2)の「本物のAIが動いて~ない」は①と②の定義を元に議論を展開しています。つまりAI家電とは、研究者や開発者からすると”蓄積された生活データからパターンを学習して(日々成長して)最適解を導くもの”ではなく、”考えられる限りのパターンを想定してそれを制御するプログラムを搭載したもの(あらかじめ設定されたもの)”なのです。
①②のような”機械学習”を行うためには、超高性能な演算装置と大規模な記憶装置が必要です。それは、”家電”本体に搭載できるような代物ものではありません。本体でなくてもクラウド上で行うことはできますが、それはネットにつながっていなければできません。現在、ネットにつながる家電は限られていますね。しかも、ネットにつながっていても機械学習の対象は、多くの一般ユーザー全体のデータです。個人の生活パターンを学習する家電は存在していないはずです。「個人の生活パターンを学習する」とPRしている家電もありますが、それは”学習”ではなくただの”履歴記録+傾向推定”です。AI研究者から見れば本物のAIではないのです。
おそらく、家電メーカーにおける【AIの定義】は次だと思います。
複数のセンサーを搭載して、
条件分岐を細かく設定して、
動作の履歴を記録して、
センサー&条件の組み合せと履歴を照合して最適解を導く
それは、研究者にとっては「AI」ではなく「エキスパートシステム」です。
AIとエキスパートシステムはまったく違います。エキスパートシステムは予めルールが決まっています。つまりルールベースのシステムです。AIは既存のルールを学習して新たなルールを自ら作るシステムです。「AI家電」の方が「エキスパート家電」と言うよりカッコイイように聞こえますね。ユーザー受けもよさそうです。ですので、家電メーカーがこぞって「AI家電」を名乗っているのです。
1980年代に「マイコン家電」というものが流行しました。これは、8bit程度のCPUを搭載した家電で、コンピューター制御で動く家電として当時かなり流行りました。現在の「AI家電」は「マイコン家電」の発展形です。違いは、センサーが増えたのと条件分岐が複雑になっただけで、本質的には変わりありません。
ちなみに、『マイコン』には次の3つの意味があります。
①1980年代:マイクロコンピューター(Micro Computer) … メインフレームに対して小型のコンピューターのことを示す用語。技術者やメーカーが用いる。
②1980年代:マイコンピューター(My Computer )… 「私のコンピューター」つまり個人用コンピューターのこと。市場でのイメージ。現在の「パソコン」の前身。
③現代:マイクロコントローラー(Micro Controller)… CPU・メモリ・入出力ポートをひとつのチップにした“組み込み専用の小型コンピューター”。家電や自動車など、決められた処理を制御するために用いられる。
「AI家電」はAI技術を用いて動いているわけではありませんが、従来品に比べてとても賢いのが特徴です。《賢い》を表す言葉は”スマート”なので意味的には「スマート家電」の方がピッタリだと思います。実際、家電業界では「AI家電」と「スマート家電」の両方の呼び方があるようです。どう使い分けているのか分かりませんが、「AI家電」はマーケティング用語なのではないかと私は考えています。つまり、市場のウケを狙った言い方であるような気がします(私の勝手な想像です)。つまり、印象操作*です。 (*) 印象操作:記事『データにだまされるな(2) 印象操作』参照
「スマート」という言葉は”スマートフォン”で広く浸透していてやや陳腐化しているので、新しさや便利さを打ち出すために「AI」の方を使っているのかも知れません。いずれにしても、生成AIの”AI”と、AI家電の”AI”は、まったくの別物であることは認識しておいてください。
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先ほど「AI家電はAI技術を用いて動いているわけではない」と述べましたが、もしかするとAI家電は「設計・開発の過程」でAIを使っているのかも知れません。
設計・開発のどこで用いるかと言うと、複雑な分岐条件を設定する(制御パターンを抽出する)場面です。AI家電(スマート家電)は多くのセンサーがついており、それらの組み合わせにおいてどう動作させるか決める必要があります。例えば「室温○○℃、湿度△△%、日差しの有無、□□人」などの組み合わせを洗い出して、それぞれにおいてどう動くかを決める必要があるのです。思いつきで決める訳にはいきませんね。何らかの根拠が必要です。そこでAIが活躍します。実際に計測した生活データ(温度、湿度、日差し、人数など)を大量に収集して、そのパターンにおける最適解をAIで求めるのです。そして、その解をプログラムにして製品に組み込みます。『AI』を名乗っている背景には、そのようなことがあるのかも知れません。

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ここからは、私のAI家電(正しくはスマート家電)との付き合い方についてお話します。
我が家にはAI機能付きのエアコンがあります。その説明書には「人が快適と感じるための情報を集めて、運転内容を決めています。」と記載されています。「日当たりの変化や、部屋の断熱性・気密性、人の在・不在などを検知・学習・記憶して、温度をコントロールしている」というようなことも書かれています。しかし、はっきり言って、そんなことは 全く無意味 です。なぜなら、
私は一人暮らしではなく家族と暮らしていますが、暑さの感じ方は人それぞれです。男だけのときは室温を低めに・風量を強めにしますが、女性(妻、母)がいる時は室温を高めに・風量を弱めにします。エアコンが、そのような家族構成を察知して自動でコントロールできるはずがありません。そもそも、人が快適と感じる温度は人によって異なりますが、エアコンに「今が快適」と教えることはできません。エアコンは、あらかじめ不特定の多数のデータを集計して統計を取った結果を制御プログラムとして組み込んでいるだけです。その家の状況を学習しているわけではないのです。ですので、私はエアコンのAI機能を無視しています。(OFFにもしていません。存在を無視しているだけです)
過去の記事でも述べていますが、私はパソコンやスマホの過剰な忖度に迷惑しています。家電も同じです。余計な忖度はやめて、指示された通りに素早く動くだけで十分です。ましてや、忖度して便利になっているかのように思わせる説明はやめて欲しいと思っています。
「指示された通りに素早く動く」という意味では、音声入力は便利だと思います。特に、エアコンとルームライトは便利ですね。部屋に入ってリモコンを探さなくても、「灯りを付けて」「常夜灯にして」「温度を27度に」「エアコン止めて」と言うだけで済むのでとても便利です。これこそが”スマート”だと思います。
以上、AI関連の話題で『AI家電』についてお話しました。AIが急速に浸透していろいろなことが便利になってきていますが、それに便乗した『なんちゃってAI』も増えています。本物と『なんちゃって』を見極める力を持ちたいものです。
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