今回は「品質」と「品質管理」に関する基本的な認識合せです。すでに「エンジニアを目指す人のための品質コラム」を読まれている方には一部重複する内容となりますが、復習としてご覧ください。
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いろいろな品質
品質にはとてもいろいろなものがあります。そして、品質の良し悪しについて議論したり語ったりする際には、何の品質なのかを正しく認識することが必要です。例えば、「マグロの品質」と言ってもお刺身とツナ缶では品質の意味や管理内容が違います。「ハンバーガーの品質が悪い」とクレームがあっても、腐っているのか、異物が入っていたのか、まずいのか、見た目が悪いのかによって対策は違ってきます。このように、何の・どの品質特性に問題があるのかを明確にしないと正しく対応することができません。また、もしかするとハンバーガーの問題ではなく「ハンバーガーショップの問題」なのかも知れません。そうであれば、それは製品品質の問題ではなく経営品質の問題であると言えます。
■品質の対象 : お刺身の品質、ツナ缶の品質、ハンバーガーの品質、ゲームの品質 など
■品質の特性 : 遺物混入(信頼性)、まずい(機能性)、見た目が悪い(デザイン性)など
■品質の範囲 :・お客様に提供する物やサービスの質 …「製品品質、サービス品質」
・仕事の質(品質、コスト、納期) …「プロジェクト品質」
・やり方の質(手法、手順、規約など) …「プロセス品質」
・経営の質(統制、倫理、戦略、育成、財務など)…「経営品質」
各範囲の関係は下図を参照してください。
本ブログで頻繁に出て来る《ISO9001》は、品質管理(品質マネジメント)の項目を規定したものなので「プロセス品質」の範疇です。また《PDCA》は改善サイクル(すなわち改善手法)のことなので、やはり「プロセス品質」です。
このブログでは、製品品質から経営品質に至る幅広い “品質” を扱っています。このブログを読んでくださっている人の中には、検査(不良品の検出)や分析・管理に関するブログだと思ってアクセスされた人もいるかと思いますが、製品品質の話だけではないことを知っておいてください。
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経営品質
品質の範囲にある「経営品質」について少し解説します。
経営品質は「日本経営品質賞」という “賞” として日本に広まりました。日本経営品質賞は「顧客価値経営を目指して変革を進めるモデルとして認められた組織を表彰する制度」です。
(日本経営品質賞のホームページはこちら)
「顧客価値経営」とは、お客様にとっての価値を最優先に考えて経営を行うことです。「モデル」とは、お手本のことです。つまり日本経営品質賞は、『お客様にとっての価値を最優先に考えた経営のお手本となる組織を表彰する制度』です。
この “表彰を決めるための基準” を経営の良し悪し(品質)を測る尺度ととらえることができますが、実は日本経営品質賞の審査基準には具体的な経営手法は示されていません。基準書が求めていることは次の2つです。
①顧客価値を最優先にした経営を行うこと
②常に組織を変革し続けること
この時、②の対象として6つの領域が示されており、①を目的として「常にこれらを変革しているか」「変革する仕組みがあるか」が問われるのです。その構造(6つの領域)が下図です。
“良い経営品質” とは、お客様にとっての価値実現を目的としてこの6つの領域を変革し続けることを言います。この6つの領域は、以前の記事「ISO9001の誤解2(業務マニュアル)」で示した『社内プロセス体系モデル』を包含しています。つまり、経営品質は組織内のすべての仕組みの良し悪しが問われているのです。
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2つの品質管理
「品質管理」という文字を目にしたとき、おそらく多くの人は「品質コントロール(Quality Control)」をイメージすると思います。しかし、本ブログで扱うのは「品質マネジメント(Quality Magagement)」です。また、書籍「ソフトウェアの品質管理 -専門家が教えない大切なこと- 」の “品質管理” も品質マネジメントの意味です。
「管理」には次の2つの意味があります。
・コントロール(Control):基準から外れないように制御すること
・マネジメント(Management):事が円滑に運ぶように統括すること
同じように「品質管理」には、「品質コントロール:QC(Quality Control)」と「品質マネジメント:QM(Quality Magagement)」の2つがあります。簡単に言うと次の違いです。
■QC:基準外のものを出荷させないこと
QCサークル、QCストーリー、QC7つ道具 などはこの範疇です。
■QM:品質問題や課題について総合的に対応すること
ISO9001は、組織のQMS(Quality Management System )を審査する規格です。
QCは、個々の製品や現場など局所的な “部分最適” を目指します。これに対してQMは、総合的な “全体最適” を目指すものです。
「品質管理」という文字を目にしたとき、QCのことなのかQMのことなのか考えてみてください。
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