片付けられない人

片付けられずに困っている人に向けて、多くのTV番組・雑誌記事・解説サイトが片付け方を教えています。しかし、それらは『片付けるとはどういうことなのか』『片付いた状態とはどういう状態なのか』をきちんと考えていないものが多いように感じます。そこで今回は、『片付いた状態とはどういう状態なのか』を考えたうえで、『片付いていない状態』に陥る原因と対策を考えてみたいと思います。


片付いている状態、片付いていない状態

部屋を片付けることを、《物を見えないようにする》とか《物が置れていないスペースを広くする=床が見えるようにする》ことだと考えていませんか? そして、限られた空間に物を押し込めるための収納グッズや収納テクニックを探していませんか? つまり、邪魔な物を他の場所に一時的に移動する(退避する)ことが “片付ける” ことだと思っていませんか? それでは、本質的な解決になっていません。数日後にはかなりの確率で元の状態に戻っているでしょう。

まず、《片付いていない状態》とはどのような状態で、そのことで何に困っているのか考えてみましょう。それは人それぞれ違うと思いますが、私が思いつくものを幾つか挙げてみます。
(1) スペースが物に占拠されて、本来の目的で使えない
   → 作業スペースや安らぎの場を奪われる
(2) 必要な時に必要なものが見つからない
   → 探す時間が無駄、最悪買い直す(重複購入)
(3) 紛失、破損、劣化のリスク
   → 間違って捨てる、踏みつけて壊す、カビ・錆・変質
(4) 精神的苦痛
   → 恥ずかしい、落ち着かない、見苦しい、自己嫌悪

物を他の場所に移動することで空いているスペースを広くすれば一時的に解決するかも知れませんが、その場しのぎの対応はやがてボロが出ます。数日経つと元の状態に戻ってしまったり、どこに移動させたのか分からなくなることもあるでしょう。

「片付け」とは、物を見えない様にすることではなく、あるべき状態に戻すことです。
あるべき状態とは《すべての物が、あるべき場所にある》状態です。
それでは、”あるべきではない状態” とはどういう状態でしょうか。
[物aが場所Aにあること] を “あるべき状態” とすると、Not(あるべき状態)は以下のいずれかの状態です
①aがどこにあるか分からない
②aがAではない場所にある
③Aにaではない物がある

先ほどの「困っていること」の(1)は③の状態です。 (2)は①の状態。 (3)は②の状態。 (4)はすべてで起こり得ます。
片付いていなくて困ることは人それぞれ違いますが、その原因はいずれも「あるべき状態にないこと・戻さないこと」にあるのです。当たり前過ぎて拍子抜けした方もいると思いますが、実はこれはとても重要なことです。片付けられない人には、あるべき状態が分からない人、分かっているが物理的に出来ない人、分かっているが性格的に出来ない人 など様々な人がいて、取るべき対策が異なるからです。


片付けられない原因

「片付ける」とは《あるべき状態》にすることです。すなわち、すべての物 を “あるべき場所” に配置することです。
そして「片付けない」とは、物を “あるべき場所” に配置しないことです。その原因には、物理的な問題と人為的な問題があります。それらを細分化したものが下の表です。

本記事の冒頭で述べた「片付け方を教えている番組や記事」は、人為的な問題を物理的な対策で解決しようとしているものが多いのです。これでは本質的な解決にはなりません。

以下、物 を “あるべき場所” に置かない理由、あるいは置けない原因について考え、対策のヒントをお伝えします。

1.物理的な問題
片付けられない原因が物理的な理由であれば対策は単純です。
(1) 収納スペースが少なければ居住環境を変えればいいのです。広い部屋に引っ越すとか、それが無理なら便利グッズや収納テクニックを探してください。
(2) 物が多いのであれば捨ててください。流行りの【断捨離】です。ただし、断捨離とは捨てることではありません。物への執着を無くすことです。(記事『断・捨・離』参照)

2.置き場所を決めていない
置き場所を決めていないのに「片付かない、どうしたらいいの..」と悩んでいる人は、まずは置き場所を決めましょう。そして、その決めた通りに置いてみましょう。一度、決めた通りに置いた状態を作ってその状態を維持するのです。
「当たり前のことを言うな!」と怒る人もいるかも知れませんね。でも、少し考えてみて下さい。「可愛い」「便利そう」「安い・お得!」と思っただけで買っていませんか? 置き場所を決めないまま買っていませんか? それが「置き場所を決めていない」状態です。それに気づきましょう。
収納スペースが少なくて片付かない人は、まず物を増やさないことを考えましょう。そのためには、買ったり貰ったりする前に置き場所を考えて決断しましょう。「何とかなるだろう」という安易に考えてしまうことが片付かない理由の一つです。

3.置き場所を忘れる
置き場所を決めたのに忘れてしまう人は、一覧にして紙に書いておきましょう。いわば目録(住所録)です。その紙すら忘れてしまう人は..家族や医師に相談してください。
置き場所にラベルを貼るのも効果的です。いわば表札です。ファイルの背表紙やトレイの引き出しラベルなどです。
物自体に置き場所を明示しておくという手段もあります。いわば名札です。
工場では、工具の形に合わせた型抜きやボードで定位置を示すやり方もあります。これを【形跡管理】と言います。これにより、どこに収納するかが分かりやすく、置き忘れや紛失も一目で分かります。
事務所で文書ファイルの背表紙にキャビネの番号や棚の位置を書いておくのも効果的です。キャビネを識別するとともに、キャビネの中の置く順番も分かります。また、棚にも同じ番号を書いておけば、貸し出し中や紛失の状態も分かります。

4.ちょっと置いておくだけ
あるべき状態に戻さないもっとも大きな原因が、「ちょっと置くだけ。後で片付ける」としたまま放置して気が付いたら手が付けられない状態になっていた、というものです。皆さんも少なからず経験があるのではないでしょうか。
これは精神的なことなので万能の特効薬はありませんが、重症度別にヒントを2つ紹介します。

1) ちょい置きが一時的な場合
ちょい置きしてしまうことを前提として、定期的にあるべき状態に戻すという策です。「ちょっと置いただけ」の物が長い間放置されることを防ぐのです。頻度は、ちょい置きの影響度やひどい状態なるまでの時間によります。行動を起こす基準を明確にしておくとよいでしょう。例えば、毎月第一日曜日など。
定期的に行えるか否かは本人の意思の問題です。

2) ちょい置きが慢性的な場合(後回しにすることが癖になっている)
「ちょっと置くだけ」という気持ちを元から断つ策です。癖を直すには別の癖で上書きするのが良いとされています。
ただし、「ちょっと置くだけ」という癖をすべて上書きすることはできません。それこそ、よほど痛い目に合わない限り無理でしょう。そうではなく、部分的に「これだけは絶対に守る」ということを決めて厳守するのです。「自分自身との約束」「プライドをかけて」と思えば意外とやれます。それが自信になって習慣になることで、ちょい置きを克服する足掛かりになります。
例えば、以前「床の上にあるものを絶対にまたがない」という策を聞いたことがあります。絶対にまたがないためには、遠回りをするか、片付けますね。片付けない癖を直すのには完全ではありませんが、第一歩にはなります。
私の場合、「後でやればいいや」とチラッと考えた瞬間に立ち上がって行動に移すことにしています。この「チラッと」が重要です。後回しにする確固とした理由があれば後回しにしますが、「チラッ」と頭をよぎった程度であれば体が自然に動くことが癖になっています。「チラッ」と思わずに放置してしまうこともありますが。


以上の策と、その元にある「片付けられない」の構造をまとめたものが下の図です。

ひとつひとつは当たり前のことかもしれません。しかし、何かを変える時は「今どういう状態であるか」を知ることは大切なことです。「片付けられなくて困っている」と思っている人は、この図を見て自身が今どういう状態にあるのか再確認してみることをお勧めします。

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